女の子にしては背が高い、長躯の少女が紫蒲桃の大樹の太い枝を登っている。この時候になると、木々の葉を覆うように、赤色や紫色の実や、黒みがかった紫色の実が沢山顔を出す。少女は慣れ親しんだ身のこなしで、枝から枝へ軽々と行き来していた。 　木々の下には、色彩が強い縞模様のスカート*を広げて上から落とされる木の実を受け止める、日焼けした肌のふくよかな少女もいた。パトゥンが一杯になると、そばにある土に実を振り落とし、何も残ってないパトゥンを張り、また実を受け止める用意をする。そんなことを疲れを覚えるまで繰り返していた。 「もう終わりにしましょう、王女様」 　木陰に立ちながら、上から放り投げられる実を受け止める大事な役目を担う少女、プリックは、この刹那に全ての実をもぎ取ろうかという様子のアニンラパット・サウェタワリット王女に告げた。 「もう降りてきて下さい。誰かに見られてしまうかもしれません」 「私はまだまだ物足りないのよ、プリック。そもそも誰も見ていないわよ」 　元気で甲高い声と共に、大きく真っ赤な木の実の束が雨のように降ってきた。 「誰もいないなんて、あちらです！　プラチョム様がもうそこまで来ています」 　プリックは、プラチョム様の名前を挙げざるを得なかった。プラチョム様は、太子様から右腕として頼られるほど信頼を置かれている存在だ。サウェタワリット宮の秩序を保ち、安全を管理しながら、宮殿内の全ての使用人に対し