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クレイニアム|第一章【支援者先行公開】

  • Nalan
  • 9月28日
  • 読了時間: 9分
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小説クレイニアム第一章

小説『クレイニアム』 第一章

「パリ行きの十六人乗りチャーター機が、農村の水田地帯に墜落しました。機体は細かな残骸と化し、当局によれば乗員乗客十五名全員が死亡したものと見られています。現在、事故原因の調査が進められています――」

 無機質な声で若い記者がマイクを握り、墜落現場を背に報告していた。警察や航空安全局の捜査官たちが原因究明に当たっているため、周囲は立入禁止の柵で囲まれている。それでも数多の報道陣が、我先にと足を踏み入れようと試みていた。

 

 濃い色のシャツとパンツに身を包んだ女が、一歩足を踏み入れる。袖をきちんと折り、動きやすさを優先した装いだ。四角い縁の眼鏡の奥には、長旅で少し疲れのにじむ瞳。それでも彼女は歩みを止めない。今朝早く、恩師からの直通電話を受け、ここへ駆けつけたのだ。数時間後には、ブサヤー――皆からはブアと呼ばれる――が、現場の調整役と向かい合っていた。

「少々お待ちください。まずは名簿を確認します」そう言われ、ブアは軽くうなずき、眼鏡を指で押し上げる。頬にかかる短い巻き髪を払いのけ、視界を確保した。

「私はニサラー准教授の代理です」彼女はそう説明し、博士課程の学生証を差し出す。卒業して三カ月、まだ大学院には返却していない証だ。「本来なら教授が来るはずでしたが、現在は海外に出張中で」

 現場関係者のための受付担当者は、再び資料を見て名簿を確認した。

「確認できました。ニサラー准教授――自然人類学研究所所属。そして、その下に……ブサヤー博士」それから視線を向けて、指導教員の後に続くブアの名前を探した。

「はい。先生は私の指導教員です。今はパナマで学会中なので、代理を任されました」

「承知しました。こちらに署名をお願いします。すぐに関係者証を作成いたします」彼女は淡々とした口調でそう言った。「もし何か必要な器具があれば、遠慮なくお知らせください、ブサヤー博士」

 書類が差し出され、彼女は迷いなく署名し、返す。

「完了しました」博士は、書類を戻しながらそう言った。

「ご協力ありがとうございます」女性の職員がそう言った。「本部と作業用テントはあちらです。今晩は急ぎで宿舎を手配しますので、多少ご不便をおかけするかもしれません」

「問題ありません」

 ブアは頷き、現場入口に立ち止まった。墜落から二十時間あまり。小型機は中部の水田地帯に墜落し、乗員乗客十五名全員が死亡したと見られている。だが捜索はなお続き、生存者を探す動きは止まっていなかった。

 視線の先で、救助犬が鼻を使って地面を探り、消防隊員たちは反射材の付いたオレンジ色の防火服を着て周囲に散開している。再び炎が上がる事態に備えていた。およそ四時間前、ブアは恩師ニサラーから電話を受けた。警察に協力し、犠牲者の身元確認を手伝うよう要請されたのだ。

 ――身元確認。それは人類学の一分野であり、とりわけ法医人類学と呼ばれる領域に属する。骨や遺体の痕跡から人物を特定する作業。人類学者や専門の法医人類学者が担う仕事だった。

 人類学の研究対象は広い。先史時代の人類から、近縁種である霊長類、ほか哺乳類や動物にまでさかのぼり、進化の系譜を読み解く。骨の形態、痕跡、その一つひとつが、種の生存戦略や社会のありようを物語っていた。

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