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ロイヤル・ピン|第四十六章 私の妹ちゃん【限定公開】



ロイヤル・ピン第四十六章

第四十六章

私の妹ちゃん



「もう何年ぶりかしら。松宮殿の特徴や魅力は、いつまで経っても色褪せないわね」


 蜂蜜のように甘く柔らかな声を持つウアンファーの言葉が、プリックの耳を通り抜け、神経を辿って体内で反響する。その心地よさに、プリックは彼女の声色を存分に堪能した。働き蜂たちの家宝である蜂蜜を生み出す主、つまりその甘い声の持ち主である女王蜂のようなウアンファーは、今日初めてここ松宮に泊まることになっていた。

 プリックは、この状況をアニン王女とレディ・ピンの間で発生している、頭痛を感じずにはいられないような冷戦の産物だと捉えていた。というのも、今日は太子様の御誕生祝賀会の当日だったのだが、それにも関わらず、アニン王女とレディ・ピンが顔を合わせる場面は一度もなかったのである。もし顔を合わせるような場面があれば、アニン王女が、自分に好意を寄せているとが明白にわかっている従姉を、わざわざ松宮殿に誘うことなどなかったであろう。

 祝賀会を包んでいた息の詰まるような空気感を一言で表すとしたら、プリックは迷うことなく『魔空空間』という言葉を選ぶだろう。それほど、あの場の雰囲気は重苦しいものだった。

 太子様の食卓にはご年配の方々が集い、その横には、これからを担う若い新芽たちの食卓が設けられていた。この若い世代の食卓を囲む顔ぶれは、アナン王子夫妻を筆頭に、ご結婚を控えたアノン王子とその婚約者レディ・オーン、さらにその妹であるレディ・オンが続く。そして、アニン王女とウアンファーの組、その後に続くのが、同じく結婚を控える貴公子グアキティとレディ・ピンの組だった。最後に席を飾るのは、アノン王子とアニン王女の親友であり、いつも笑顔の絶えないあのプラノットである。

 熱い、熱すぎる!

 人間の感情に敏感で、第六感の鋭い女性であるプリックは、その場を遠目からじっと眺めていた。実際に食卓を実際に囲んでいる人々以上に、プリックはその場の下から燃え上がるような炎の熱を強く感じ取り、まるでそれを体感しているかのような気分だった。

 目の前に広がるその食卓を例えるなら、豪華で幅広い年代と地位の主人たちの繰り広げる、激情が見え隠れする手に汗握る舞台劇だと言えるだろう。

 まず最初に目にした劇は、アナン王子が奥方であるレディ・パーラワティに向けた愛の物語だった。それは一見すると何の問題もなく、むしろ美しい劇だったのだが、時折、ふと緊張の糸が切れたような瞬間に、アナン王子が愛に満ちた視線をウアンファーに向けることがあった。

 それは、プリックが気を抜いて眺めていても、簡単に見抜けてしまうほど明白だった。

 これが仲睦まじい夫婦の間の演目だとでも言うのだろうか。

 そして、次の役者はオンだ……。

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