第四十二章
怒り
「私がグアさんと結婚しますから……」
激しい慟哭とともに飛び出たその言葉は、非常に聞き取りづらいものだったが、アニンラパット王女の全身に巡らされた神経は、まるで耳元で囁かれたかのように、その言葉をはっきりと聞き取っていた。
「何を言っているの……ピンさん?」口をついて出た言葉そのままに、面を食らった様子のアニンラパット王女。はっと我に返るとすぐにしゃがみ込み、自分の足元でクラープを続ける想い人の肩にそっと優しく触れた。「ピンさん、あなたは自分の気持ちをもっと大切にして良いんですよ?」
彼女から返事はなく、俯きながら頭を激しく横に振る。その振動で小さな涙の滴が飛び散るのが見えた。
「私たち二人のことは、私がお父様に直談判するわ」
その言葉が、涙が止まらない彼女の心をさらに激しく揺さぶった。
「そんなことはしないでください。自分を犠牲にしないでください。私がグアさんと結婚すれば、その必要はありませんから」
愛する人からのその応答に、アニン王女の顔色は絶望を表すものへと変わっていった。王女はゆっくりと立ち上がり、背筋をすくんと伸ばすと、やりきれない思いを両手に込め、手のひらが真っ赤に染まるほど強く拳を握りしめた。
「どうして、そこまで簡単に身を引こうとするの?」
「……」
「これが、あなたの......ピランティタという人間の……愛なの?」