第四十三章
部屋の主
「風の噂で聞いたけど、もういろいろと予定の取り決めがあったらしいわね、プリック」
前翼宮の自室で、ソファに座りながら静かに本を読んでいたアニン王女が、静寂を切り裂き、鋭い質問をプリックへと投げかけた。
「はい」
プリックが答えると、悲しげな空気が部屋の中に充満した。プリックはアニン王女の悲しみに満ちた両目と目を合わせる勇気がなかった。もし目を合わせでもしたら、アニン王女と共に終わりの見えない苦しみに沈み、二人で嘆く未来が容易に想像できたからであった。
「それで、いつ婚約するの?」
アニン王女は本から一切視線を動かさず、プリックに問い続けた。
「明後日のようです」
「そう……」アニン王女の口角は上がっていたが、その目に生気はなかった。「恐ろしく早いわね。パッタミカ叔母様の狙い通りというわけね」
「その日に婚約すると縁起が良いらしくて......」プリックが乾いた笑みを浮かべる。
「それなら今頃、蓮宮は対応に追われて、てんやわんやでしょうね」
「そうじゃないんです!」プリックがまるで火をつけられたように身体を震わせながら言った。「婚約披露宴は、この前翼宮の庭園で行われるそうなんです」
この話には、さすがのアニン王女も読書をやめ、プリックと目を合わせざるを得なくなった。
「ここでやるの?」