
特別編
第八章 横やり
第一話
「随分昔、一緒に二人で雪を見れたらと考えたことは確かにありましたわ。でも、それが今日この日になるなんて、夢にも思いませんでした」
一枚の硝子で隔てられた室内から、外で自由気ままに降り積もる白い雪を眺めながら、ピンはそんなことを口にした。目の前には、いつものようにアニン王女が座っている。
「夢のような話ですものね」アニン王女はえくぼを浮かべながら穏やかに答えた。「レディ・ピランティタが望まれることで、アニンにできることであれば、絶対に実現させてみせますわ」
アナン王子一家の訪問に便乗して、アニン王女は、ピンと腰巾着のプリックの二人をイギリスまで連れてきていた。
「アニンがそれを覚えているとは思わなかったわ」ピンがと幸せそうにクスリと笑う。「だって、私が手紙にさらりと書いた、ただの一文に過ぎなかったもの」
「ピンさんに関わることであれば、何でも覚えているわ」
アニン王女の言葉を聞いたピンの表情が、クスリと笑うような小さな笑みから、屈託の無い幸せそうな笑顔に変わる。
「こんな風に、一緒に雪を見ているこの瞬間でも、アニンは寂しいと感じているのですか?」