
特別編
第六章 殿下
第三話
パッタミカが私の側近として仕えるようになってから、もう七年が経つ。その七年目に入ってから、彼女が私の足元で自分の腕を枕にして眠っている光景をよく見るようになった。私の寝台の隣に敷いてある布団で寝るようにと、何度も声を掛けてみたのだが、どうやら聞く耳を持たれていないようだ。
この頃、私は夜更けに目を覚ましてしまうことが常となり、そのたびに足元で寝ているパッタミカを起こし、布団で眠るように促すようにしている。私が眠るそぶりを見せない限り、彼女は私の足元から動こうとしないのだ。だから私は、目を閉じて眠ったふりをすることで彼女が布団に行くように促し、それから、すやすやと寝息を立てる彼女の顔を朝日が差し込むまで眺める。
夢の世界へと誘われた彼女の寝顔は、いつもの厳しい眼光が閉じられたせいか、幼い少女のように可愛らしい。部屋中に響く彼女の規則的な吐息は、一日のうちで僅かほどしかない安寧の時間を私にもたらしてくれる。あの憎たらしい咳でさえ、この時間の中にいる私を邪魔することはできない。
なぜなら私は、朝焼けが訪れるまでの彼女の夢のひと時——大切で切ないひと時を、咳などで壊したくはないからである……。
「もうお目覚めですか、トゥーンクラモム」彼女は私が起きたことを確認すると、毎朝のようにそう声をかけてくれる。「お体の調子はいかがですか? どこか痛いところや、悪いところはございませんか?」