第三十四章
ミニチュアホース
「デーンおばさん」
ピンは台盤所で、尋常ではない速さで料理に向き合っているプリディピロム宮殿の炊事長に話しかけていた。今回、宮殿を訪れた主たちの中には、欧風の朝食を好む方もいれば、タイ風の朝食を好む方もいる。また、そのような中に紛れて、コーヒーや純度の高いオレンジジュースだけを飲む方もいた。
デーンは使用人を集め、万全の準備を整えて、この問題の解決に乗り出しているところだった。
「はい、レディ・ピン」
デーンは、アニン王女のために海老のお粥を作っていた手を一度止め、自分の名を呼ぶピンのもとへと急いで向かった。
「海老のお粥は私が味付けをするから、デーンおばさんは何もしなくて良いわ」
「はい、レディ・ピン」デーンは何度も頭を下げて了承の意を伝えた。「レディ・ピンが来てくださって、大変助かりました。もし私が作るお粥の味が失敗していたら、怒られていたかもしれません」
「アニン王女は誰にも怒ったりしないわ、デーン。もし味がお気に召さなければ、少ししか召し上がらないか、全く手を付けないかのどちらかだもの」
アニン王女が自分の料理を気に入ってくれ、お渡しした食事を全て完食してくれたことを嬉しくて、デーンは控えめに微笑んだ。
「王女殿下は、幼い頃とはまるで別人になられました。以前お越しになった際は、用意したお菓子をほとんど全てお召し上がりになられていたのに」
デーンは昔を思い返しながら、幸せそうに微笑んでいた。思い出していたのは、太子様とアリサー妃が、夏休みの間にアニン王女を連れてこられた時のことだった。
「そうなのよ……私も同じ疑問を抱いていたの、デーンおばさん」湯気が立ち込めるお粥に味付けをしながら、ピンは炊事長と会話を続ける。「ところで、他の方々の朝食の準備はもう済んだのかしら、デーンおばさん?」
「あとはポーチドエッグだけです、レディ・ピン。もう少ししたら作り始めようと思います」
「プリックの姿も見当たらないわ。どうして台盤所の手伝いに来ないのかしら。デーンおばさん、何か知っている?」