第十四章
調査
「私はそれ以上に想っているの……」
心地良いその声色は、ピンの耳元を山彦のように何度も反復する。
ピンの手は未だにアニン王女の頬に触れたままでいる。その手を覆うように、アニン王女の手が優しく添えられる。
頭では自身の手をそこから引き抜くように指示を出す。しかし、心は頭とは裏腹に、目の前にいる人から優しく触れられたその温もりを欲していた。
そして、身体は力なく崩れるようで、どうやら頭の指示よりも、心の影響の方が大きいようだ。
それ故、ピンの小さな手は理性に従わず、まだ誰かしらの手に包まれていた。
「それ以上とは、何なのですか」
ピンはアニン王女にもっともっと身を寄せていく。互いの息遣いが聞こえてしまうほどの距離感に。丸く茶色の瞳で、自身のことは沈黙を貫きながら、自分を見つめ続ける相手の濃いの眼を見つめ返し、真剣な様相で尋ねる。
「うーんと」
「私のことを、それ以上に……とはいったいどういうことなのですか」
その問いの後、またしばらくの沈黙が流れた。アニン王女は唾をゴクッと飲み込み、すぐに消えてしまいそうな声量で答える。