第十二章
長男
誰かにとって……待っている時間は、ゆっくりと時が流れ、気を持たせるかのように遅く感じる。そう、アナン王子にとって。
しかし、別の話題となれば、相反するように、時は一瞬で過ぎ行くもの……。
例えば、松宮は想像以上に早く出来上がり、完成した日はアニン王女が留学をしてから丁度六年が経ち、ピンが六年目の初日として印をつけた日と同じだった。印をつけるピンは待ち焦がれるかのように、少しばかりはしゃいでいる。
アニン王女の松宮殿は第一王子の西宮殿や第二王子の南東宮殿のように大きな建物ではないが、当初パッタミカ王女がおっしゃっていたように小さな宮殿ではないようだ。
西欧のモチーフに模られた木造の建物には、幅広いバルコニーも設置されている。周りは背の高い松の木で覆われ、宮殿の裏手には綺麗に装飾された花園があり、午後に紅茶を嗜む為に木製のパーゴラも園の隅に隠すように用意されている。
さらに、特別な物がある。、それは、松の木が影になるよう作られた、宮殿の隣に位置するテニスコートである。床は葉のような緑色が塗られ、はっきりとした白い線がコートの内外を映し出す。
「アニンって本当に体を動かすのが好きな上に、お金持ちの度合いも半端ないね」アナン王子が完成した松宮の下見をしに来たときに呟く。
「でも、本当にアニンらしいですね」アノン王子は笑いながらそう話す。
「それならどうなるか見てみようか。僕ら二人が誘われて、このコートでテニスをして遊べるかどうか」アナン王子はそう言い、あたかもテニスの練習をしているかのように前から後ろへと腕を振る。