シークレット・オブ・アス|第二十四章 行くか、行かないか【支援者先行公開】
- ミーナム
- 7月12日
- 読了時間: 16分

シークレット・オブ・アス 第二十四章 行くか、行かないか
スージーは、車からもう一度降りる前に、女優の顔をじっと見て身だしなみを確認する。夜十時近いこんな時間に、誰かを隠すためのお洒落なサングラスはもう必要ないけれど、アーンの元気のない目を見ると、心配せずにはいられなかった。今回の旅行で、先生が用意したチケットが無駄になるのではと、それだけが不安だ。仲直りする様子もないし、いつものように甘くて幸せな時間を見せてくれる気配もない。
「アーンちゃん、そろそろ車から降りましょうか」
「はい、スージーねえさん」
スワンナプーム国際空港はまだまだ人でいっぱいだ。もうこんな時間だし、そろそろ新しい一日のために休息を取るべきなのに、ここにいる人々はただひとつの目的でここにいる。それは航空機で旅立つこと、あるいは親しい家族や友人を見送ること。
たくさんの視線が向けられ、何人かは個人の携帯電話を取り出して写真を撮り始めているけれど、女優はまったく気後れせず、いつも通りの態度でいた。今回の旅はファーストクラスのチケットを利用しているおかげで、非常に快適だった。
チェックインの列に並ぶ必要はない。搭乗券を受け取るとすぐに、スタッフが荷物を引いて、一般客とは別になっている専用の出国審査場へと案内してくれる。だから長時間待つ必要もない。審査を終えると、航空会社が用意した車で、ラウンジへと連れていってくれる。そこは乗客が最大限にリラックスできる場所で、食事メニューも豊富に揃っているし、待ち時間にはマッサージで筋肉をほぐすことだってできる。
女優はソファに深々と腰を下ろし、重すぎない食事を注文した。ドラマの撮影を終えてすぐ空港へ向かったので、どこにも寄って食事をする時間がなかったからだ。センセイが高額なチケットを選んだのは、周りの目を気にせず、二人だけの時間を持ちたかったから。自分に対する疑惑の目で、アーンに辛い思いをさせたくないからだと言っていた。でもセンセイがそう言わなかったとしても、アーンはいつもより高いチケットを選ぶつもりだった。周囲の視線は気にしていない。ただセンセイと二人きりの時間が欲しい、それだけのことだった。
けれど、今のところセンセイが空港に現れる気配はなく、電話をかけても電源が切れている。もしかすると今回の旅行は、一人寂しく過ごすことになるかもしれない。あの夜のことをセンセイはまだ怒っている様子で、仲直りの兆しが見えない。
「センセイ、本当にアーンをひとりでイタリアに行かせるつもり?」






