シークレット・オブ・アス|第十八章 心、脆く【支援者先行公開】
- ミーナム
- 6月14日
- 読了時間: 16分
更新日:6月28日

シークレット・オブ・アス 第十八章 心、脆く
新しい日を迎える朝、太陽の光が差し込んで目を覚ました。まだ眠りの中にいたかったが、目を開けて、鳴り響く電話の音を探し始めた。いつも通り、ベッドの横にある小さなテーブルの上に電話を置いていたはずだが、今回はその場所に電話は見当たらない。しかも、部屋は自分のものではないし、電話は白いガウンの中に入っているはずだ。それが部屋のどこに置かれたのか全くわからなかった。
ラダーはベッドの端に白いガウンを見つけて、電話の音を止めるために体を起こす。画面に示された名前を見て、迷わずその電話を取った。
「はい、お母さん。昨夜、ラダーは家に帰りませんでした」相手は知りたかった答えを得られたようで、電話は切られた。今のところ、ラダーは話の内容よりも隣にいた女性の裸に気を取られているようで、母親のラッサミーが娘に早く帰るようにと言いたかったことがうまく伝わっていないようだった。
温もりを求めて身を寄せていた女性が、疲れた目をゆっくりと開けようとする。その仕草があまりにも愛しくて、見ていた人は思わず微笑んでしまった。携帯の着信音で目が覚めたのだろう。大きなキルトからゆっくりと姿を現した裸体は、ファーラダー先生の心を今も揺さぶり続けていた。
「センセイ……」
「私は帰る」隣の裸の女性が背後から彼女を抱きしめている時、ラダーは落ち着いた声でそう言おうとした。二人の裸の体が触れ合う時、まるで自分の心ではないかのように感じたことを、サニターダーは気づいているのだろうか?
「午後は仕事があるの。だから、それまで一緒にいてくれる?」甘えるような声と、裸の肩にそっとキスをする薄い唇に、ラダーは小さくため息をつくしかなかった。
静かで感情の読めないその瞳に見つめ返され、女優の彼女はどうしても自信をなくしてしまった。あの甘えるような言葉が、果たしてどれほど彼女の心に届いたのだろうか。昨夜は本当に甘く、優しいひとときだった。だから今朝、ふたりはきっと気持ちが通じ合ったと思っていたのに――そう思っていたのは、自分だけだったのかもしれない。ラダーは、あの日の優しさを忘れたかのように、いつもと変わらぬ冷静な彼女に戻っていた。
「どうして私があなたと一緒にいなきゃいけないの?」
「だって、アーンはセンセイのことが好き。会いたかったから」甘えるような声の主は、変わらず優しく微笑みながらセンセイを見つめた。けれど、彼女は無表情のまま、その笑顔に一切反応を示さない。でも、アーンにはわかっていた。どうして彼女が二度目の別れを切り出した理由を、センセイがあえて聞こうとしないのか。それは、彼女が自分のプライドを簡単に手放すような人じゃないから。きっと、その方が良かったのだ。理由を口にしてしまえば、きっとお互いの心を深く傷つけることになるから。
たとえセンセイの口から「愛してる」という言葉を聞けなくても、アーンはもう引き下がらない。もう二度と、センセイを遠くに行かせたりなんてしない。たとえこの先、また同じような問題にぶつかることがあったとしても、その時が来たら、反対する人たちにきちんと説明するつもりだ。彼女がどれほどファーラダー先生を想っているのかを。
「でも私は……」
「たとえセンセイが『無理だ』って言っても、私は信じない。だって、センセイの気持ちはまだ、私のものでしょう?」
「本気になると思わないで、サニターダー」耳元に囁かれたそのかすかな声に、首に腕を絡めて引き寄せていた女優の彼女は、どうしても胸が痛くなるのを抑えきれなかった。でも、彼女のセンセイは、いつだって言葉と心が正反対。もし本当に何も感じていないのなら、戻ってくることなんて、なかったはず。あの人なら、新しい携帯なんてすぐに買える。わざわざ彼女のもとに戻ってまで、電話を取りに来る必要なんてなかったはず。もし、何も想っていなかったのなら。
「センセイは本気じゃないけど、アーンは本気よ」
上に乗っている相手が唇をすぼめているにもかかわらず、女優は甘いキスを噛み締めるように、薄い唇で柔らかなキスを始めた。
馴染み深い感触と、まだ欲望に従おうとする心。ラダーが相手に自分の甘く優しいキスへと近づくチャンスを与えることは、決して難しいことではなかった。
そして、欲望を抑えきれずにいるのは彼女自身のほうだった。細い指が美しい胸元に触れ始める。






