シークレット・オブ・アス|第十七章 電話【支援者先行公開】
- ミーナム
- 3 日前
- 読了時間: 14分
更新日:7 時間前

シークレット・オブ・アス 第十七章 電話
寝室に差し込む朝日の光と、セットしておいた携帯のアラーム音が、ベッドの上で心地よく眠っていた女性の瞼をそっと開かせた。彼女はゆっくりと視線を部屋の中へと巡らせ、ベッドの反対側にある皺になったシーツの跡に視線を止めた。そこにはまだ温もりが残っていて、朝から自然と微笑んでしまう。すでにその相手がこの部屋にいなかったとしても。
手首には赤い跡もなく安心したが、ベッドの上に置かれた白い布を見ると、昨晩の幸せな記憶が鮮やかによみがえり、女優は思わず恥ずかしさで頬を染めた。ただ、胸元に残る赤い痕には注意しなくてはならない。誰かに見られたら、絶対に面倒なことになる。
「またスージーねえさんに怒られちゃうな」
マネージャーにどれだけ叱られるかは容易に想像がついていた。ちょっと油断していただけなのに、目ざといトランスジェンダーのマネージャーに見つかってしまい言葉を次々とまくしたてられ、ほとんど聞き取れないほどだった。結局、彼女が疲れて止まるまで言わせておいた。そして今朝もまた詰問するような目で睨まれている。
「スージーねえさん、そろそろ行きましょうよ。遅れちゃいますよ?」
「だめよ。その前にちゃんと説明してもらわなきゃ」マネージャーはそう言い放った。目につく場所に痕跡を残してしまった以上、見過ごすわけにはいかなかった。最近のメディアは目ざとくて、もし写真でも撮られたら大変だ。虫刺されやアレルギーなんて言い訳は通用しない。それに何よりも怖いのは、愛娘を溺愛している将軍閣下に呼び出されてしまうことだった。
「本当に何もないですってば」
「何もないわけないでしょう、アーンちゃん。ねえさんは一つしか見てないけど、きっと一つだけじゃないんでしょう?」スージーは水を飲みながら、いつも素直でかわいいこの女優を軽く睨んだ。あのファーラダー先生に出会ってから、“自分らしく”なりつつある愛しいアーンを。
「昨夜、センセイと私は……」
「きゃー! それって最高だったってこと? ちょっと待って、それはABCくらい? それともアドバンス?」
「スージーねえさん、それってわざと聞いてます? それとも本当に知らないんですか?」
「わざとよ、これだけ派手な跡があればわかるわよ。わからなかったら出家した方がいいわね。相当激しく昔を思い出しちゃったのね。これ、メイクでも隠しきれないわよ」
「ごめんなさい、スージーねえさん」女優は照れながらマネージャーに微笑みかけた。確かに自分も先生も、昨夜は少しばかり過去の思い出に浸りすぎたのだろう。
「よかったわね、最近はイベント出演がなくて。ドラマ撮影だけで済んで」
「はい」
「もしイベント出演があったら、ねえさんが必死で赤い跡を消す方法を探さなきゃいけないところだったわ」
「はい」
「全然否定しないわね。それより、アーンちゃんがこれだけ跡を残されたなら、先生の方はどうなってるのかしらね?」