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クレイニアム|第二十九章【支援者先行公開】

  • Nalan
  • 24 分前
  • 読了時間: 9分

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小説クレイニアム第二十九章

小説『クレイニアム』 第二十九章

「ブアさん、そのスカラベ、売る気はありませんか?」

 その一文を、ブアは何度も何度も読み返していた。返信をどうすべきか決めかねている。ソンウットは、あのスカラベが彼女の物ではないことを知らないのだろう。

 驚きながらも、彼女は指先で画面をなぞり、返事を打ち始めた。

「買いたい人がいるんですか?」

 すぐに返ってきた文字は、熱を帯びていた。

「見つけられますよ。本物であれほど美しいなら、相当いい値になります。ブアさん、どこから手に入れたんです?」

「ピンヤーからです」

「そうですか」また返事。「実は前に頼まれたことがあったんですが、一度も入手できませんでした」

「そうなんですか?」ブアは指を走らせる。「私は何も知らないんです、詳しくなくて」送信キーを押す。「そのスカラベ、本当に高値なんですか?」

「夕食をご一緒しませんか。その時にお話しします。きっと驚かれますよ」文字から自信が滲む。「もし他にも手放したい物があれば教えてください。ハビリスなんかも面白い。もしお持ちなら」

 ブアは眉をひそめた。彼にこんな副業があるとは知らなかった。(今どき、仕事は一つじゃ足りないのね)

 ただ、心の奥ではスカラベの値段が本当に彼の言うほどなのか気になっていた。だが、ピンに黙ったまま承諾するのは危険だ。あの子はきっと大騒ぎする。

 自分の感情が「好き」の一言を越えてしまっていることを、ブアは分かっていた。それでも、不安が常に胸を塞ぐ。伝えたい時には必ず「信じきれない」影が顔を出すのだ。愛しながら疑うのは不公平――そう思うたび、彼女は言葉を飲み込む。

 だからもしピンが、この曖昧な関係から出て行ってしまっても仕方ないとさえ思っていた。本当にその日が来たら、きっと自分も泣くのだろうが。

 ピンが変わろうとしているのは伝わっている。けれど、自分の心はそう簡単に拭い去れない。何もかもが急転直下で、心が追いつかなかったのだ。

 誰が想像できただろう、一度は激しく憎んだ相手と、同じベッドで眠る夜が来るなんて。

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