【4 Elements】アース|第十章「煙と曖昧さが晴れてゆく」【支援者先行公開】
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小説『フォーエレメンツ:アース』 第十章 煙と曖昧さが晴れてゆく
新しい朝は、頭の中の映像がまるで独楽のようにぐるぐると回っているかのような重苦しさとともに始まった。あるいは、この世界そのものが激しく揺さぶられていたのかもしれない。おかげでまったくすっきりしない目覚めだった。ローズはもう一度目を閉じて焦点を合わせ直してから、どうにか体を起こしてヘッドボードに背中を預け、見慣れない部屋をぐるりと見回した。
ぼんやりと座ったまま、何度かまばたきを繰り返すうちに、昨夜の出来事が少しずつ繋がり始めた。ここはチェンマイにあるカーンダーさんの新しいホテルで、単なる部下のケーオさんの代わりに、妻としてディンの仕事に同行したのだった。それに昨夜は、カンさんのことでなんとなく気に食わなくて落ち着かなかったし、ディンにも長く待たされたものだから、つい拗ねて寂しさをこじらせ、ワインを何杯も飲んでしまった。そのあとのことはほとんど記憶がない。まるで映像がぷつりと途切れたように。
自分はお酒に強いと思い込んでいた人間の末路が、こうも無残なものになるとは!
「ローズちゃん、起きたんですね?」
「ディンお姉さん!」
ローズは驚いて目を見開いた。ついさっきまで拗ねた気持ちで思い出していた人が、突然寝室に現れたのだ。ディンはもう着替えを済ませ、予定通り今朝帰るため、出発の準備が整った姿だった。一方の自分はといえば、ひどい有様もいいところで、昨夜のパーティーで着ていたドレスのままだ。
「頭は痛くないですか?」
「少しだけ。それより、昨夜のわたし、そんなに酔ってました?」
「ええ、昨夜はかなり酔ってましたよ」
「わたし、何も覚えてなくて……。ディンお姉さんが部屋まで連れて帰ってくれたんですか?」
「部屋に連れ帰って休ませたら、そのまま今まで眠っていたんですよ」
ディンは慈しむような微笑みを浮かべた。年下の彼女が、自分が掛けてあげた厚い毛布の中をそっと覗き込んでいるのが見えたからだ。昨夜は寝姿も楽になるよう整えてあげた。柔らかいベッドの上のほうが、自分の硬い体の上で寝るよりずっと快適だったに違いない。
そして、ローズは自分の身なりに問題がないことを確認すると、安堵のあまりつい大きな溜息をついてしまった。はっとして顔を上げると、じっとこちらを見つめていたディンと目が合い、ばつが悪そうに笑った。
「昨夜、ローズちゃんが意識のないときに手を出したりはしていませんよ。安心してください」
「わたしも……ディンお姉さんがそんな人じゃないって、ちゃんとわかってますよ。そうじゃなかったら、信頼して結婚なんてしてません」
彼女もモッデーンも同じ意見だった——ディンは紛れもない淑女だし、少し照れ屋なくらいに自分を大切にしてくれる人だ、と。だから、酔って意識のない隙に何かされるなんて、現実にそんなことが起こる可能性は、まずありえないと言い切れる。
ちょっと待って。でもなぜだろう、「照れ屋」という言葉にやけに覚えがある。つい最近この言葉を口にしたような気がするのに、いくら考えても、いつ言ったのか思い出せない。
「ベッドから出てシャワーを浴びてきてください。朝食を部屋に運ばせますね」
「ディンお姉さんはもう食べたんですか?」
「まだですよ。ローズちゃんと一緒に食べようと思って」
「でも、もう十一時過ぎてるんですか? こんなに寝坊してるのに、どうして起こしてくれなかったんですか。朝のうちにチェンライに帰る約束だったのに」
まだ眠気の残る顔に、昨夜のアルコールの余韻を漂わせたまま、ローズは甘えた声で尋ねた。携帯を手に取って時間を見て、自分がとんでもなく寝坊していたことに気づいたのだ。
「気持ちよさそうに寝ていたから、起こしたくなかったんです。午後から帰ればいいですよ」
「ディンお姉さん、わたしを甘やかしすぎですよ」
「ローズちゃんを甘やかさなかったら、誰を甘やかせばいいんですか」


