【4 Elements】アース|第四章「ローズは気が早い花嫁候補」【支援者先行公開】
- 6月14日
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小説『フォーエレメンツ:アース』 第四章 ローズは気が早い花嫁候補
「おはようございます、ローズさん……あれ、何ですか? 見えてないんですか?」
ロムはにっこり笑ってローズに挨拶した。ディンと一緒にセンラック農園に戻ってきたところだった。朝早くに二人がティパコンのお見舞いに病院へ行き、そのあと隣の花畑にも寄ると、ジャンおばさんから聞いていた。起きて間もなく車が家の前に停まる音がしたので、挨拶しようと出てきたのだが、まさかこんなにあっさり無視されるとは思わなかった。
「ディンねえ、ローズさんはどこにそんなに急いでるんですか」
「ローズちゃん、きっと私とは結婚したくないんだよ」
「え、何? なんだか話がかみ合ってない気がするけど」
「ロムが昨晩、ローズちゃんと結婚したらって言ってくれたでしょう。あの作戦、もうダメみたい」
ディンは従妹に不安げに言った。昨夜、真剣に話し合ったときにロムが提案してくれた作戦のことだ。マハッタナコン家の標的を自分に向けさせる唯一の方法になるなら、と自分も賛成していた。けれど、ローズは協力してくれないどころか、きっと今ごろ当たり散らしているに違いない。
「まさか、ディンねえ、もうローズさんにプロポーズしちゃったの」
「うん。さっきチョムジャン農園にいたときに」
「で、ローズさんは何て?」
「何も答えずに歩いて行っちゃった。帰りの車で話しかけても、口をきいてくれなかった」
「ちょっと待って、あたし、頭が混乱してきた。ディンねえ、どうやってプロポーズしたの? ちゃんとタイミングを見計らった? ロマンチックな雰囲気で? それとも、結婚しなきゃいけない理由を理屈で説明した感じ?」
「いや、ただ『ローズちゃん、結婚しない?』って言っただけ。そしたら、怒らせた感じ」
「……」
「まだ理由も説明してなかったのに。なぜ結婚する必要があるのか、ちゃんと続けて話すつもりだったんだけど、ローズちゃんが口を開く隙を与えてくれなくて」
そんなの当たり前でしょ! 信じちゃってさ、 ディンさんってば。そんな風にいきなりプロポーズなんかされたら、百人中百人が固まって驚くに決まってる。その場にいなくたって、ロムには状況が目に浮かぶ。この姉さんらしいと言えばらしい。だからローズが挨拶もそこそこに家の中へ駆け込んでいったのか、ようやく合点がいった。
「いや、あたしはローズさんが怒ってるとは思わないよ」
「じゃあ、どうしてローズちゃんは返事もしてくれないし、話もしてくれないの」
「びっくりしてるんだよ。あたしだって聞いてびっくりしたもん。先に理由を話してから結婚の話を持ち出すべきところを、ディンねえは順番を逆にしちゃったんだから。どんな人だって固まるって。今ごろローズさん、盛大に誤解してると思うよ」
「じゃあ、急いで追いかけて謝って、ちゃんと説明したほうがいいよね」
「まずはローズさんに時間をあげて。今は追いかけないで。それと結婚の話、もっとちゃんと理由を考えてからにしたほうがいいわ。たとえ偽装だとしても、ローズさんが簡単に首を縦に振るとは思えないし」
そう、もしローズに本当の理由を——マハッタナコン家の人間の目を欺いて標的を自分に集中させるための偽装結婚だと——打ち明けたら、間違いなく猛反対するだろう。自分がこれ以上危険なことをするのを絶対に許さないはずだ。昨夜、ワスの証拠を掴むために自ら危険に飛び込んだことすら、ローズはまだ知らない。それなのに、帰りを待っていてくれたあの心配そうな顔。
これ以上、本当の理由を知らせて心配をかけるわけにはいかない……。
「ローズさま! ぼんやりしすぎですよ。もう少しで私めにぶつかるところでしたよ」
「モッデーン、いつからそこにいたの?」
「ローズさま、誰かから逃げてきたんですか? すごく急いでたみたいですけど」
「モッデーン、ちょっと話があるの。こっちに来て」
ローズはモッデーンの手首を掴んで、人目のない場所へ連れていった。ディンから逃げるように家に入ってきたばかりで、ロムの挨拶まで無視してしまったことに申し訳なさも感じていた。
でも、あの場では逃げるしかなかった。もしディンが追いかけてきて、さっきの結婚の話の続きをされたら、もっと頭が真っ白になってしまう。
「ねえモッデーン、助けて。わたし、これからどうしたらいいと思う?」
「何があったんですか、ローズさま? なんだかただならない様子ですけど」


