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【4 Elements】アース|第三章「ワーティンワニット家の大切な人」【支援者先行公開】

  • 6月13日
  • 読了時間: 20分


小説『フォーエレメンツ:アース』第一章

小説『フォーエレメンツ:アース』 第三章 ワーティンワニット家の大切な人

『ディン、何をしてきたんだ。どうしてそんなに泥だらけなんだ』

『お父さん』

『転んだのか?  うちの娘はやんちゃだから、いつも傷を作って帰ってくるな』

『ディンお嬢さまは自分で転んだんじゃありませんよ、カシディットさま。ワスポンさまのご子息が、いつもディンお嬢さまをいじめるんです。ジャンはもう何度も叱ったんですけど、目を離すとすぐにまた意地悪をするんですよ』

『ジャンさんが言っていること、本当かい、ディン』

 幼いディンは、父親の問いかけに小さくうなずいた。自分からお父さんに言いつけたことは一度もなかった。お父さんが農園の仕事や作業員の管理に追われて大変なのはわかっていたから、子ども同士のことで頭を悩ませたくなかったのだ。だからジャンおばさんが代わりにお父さんに報告してしまった。言わなくていい、お父さんには伝えないでと頼んでおいたのに。

『じゃあ今日はお父さんが手当てしてあげよう。痛かったら言うんだぞ、ディン』

 カシディットは娘の両膝の傷を、できる限り優しく、慎重に手当てした。力を入れすぎたら、生まれつき体が弱く、よく体調を崩すディンを傷つけてしまうのではないかと心配だったのだ。けれど、カシディットは、娘が生まれたときから体が弱いからといって、外の世界に出ることを妨げたり、腫れ物に触るように育てたりしたことは一度もなかった。強く成長してほしい——そう願っていたからだ。

 父親は、沈黙を破るように娘に話しかけた。外見こそ弱々しく見えるディンだが、父親として、この子の内側にどれほど強い心が宿っているか、よく知っていた。だからこそ、泣きごと一つ聞こえてこないのだ。

『どうしてお父さんに言わなかったんだ?  いじめられてるって』

『ディンはお父さんに心配かけたくなかったの。ディンが弱いから、やり返せないからいじめられるの』

『お母さんのダーオが生きていた頃、ダーオはいつもディンにいい子でいなさいって教えていたね。覚えてるかい』

『覚えてます、お父さん。ディン、覚えてる』

『ダーオはきっと誇りに思ってるよ、お父さんとお母さんのディンがいい子に育ってるって。でもね、いい子でいること、人をいじめないことと、いじめられても黙って我慢することは違うんだよ』

『でもディンはワスに勝てないの、お父さん。ワスは背も高くて大きいし、ディンは女の子だから力が弱いもの』

 もし歯向かったら、ワスはきっと今まで以上にひどいことをしてくるだろう。転んで擦りむいた程度では済まないはずだ。ワスはいつもガキ大将のように振る舞い、自分の農園の作業員の子どもたちも、学校のクラスメイトも、誰彼構わずいじめていた。

 けれど幸い、ワスはローズをいじめなかった。ワスがかつて、ローズは大人になったら自分のお嫁さんになるのだと言っていたからかもしれない。

『人は力で戦うばかりが能じゃないんだよ。ディンの力が弱いなら、知恵で戦えばいい。頭を使うんだ。いつもテストで一番を取ってるじゃないか。お父さんはね、ディンは十分すごいし、誰にも負けてないと思ってるよ』

『ワスはいつもテストで赤点を取ってるよ』

『ほら、ディンのほうが優れていることがちゃんとあるだろう。お父さんとお母さんはただ、ディンが幸せに育って、自分の力で生きていけるようになってほしいだけなんだ。大人になって余裕ができたら、弱い立場の人を助けてあげるんだよ。お父さんは、ちっちゃなディンが強くなって、いじめに屈しない子になってほしい。そして、自分からは絶対にいじめない子であってほしい』

『ディンは誰かをいじめようなんて思ったことないよ、お父さん』

『でもな、大きくなっていじめられたとき、お父さんとお母さんが守ってあげられなくなったら、ディンは自分で自分を守らなきゃいけないんだ、わかるかい。同じ傷を何度も負うようなことはしちゃいけない。お父さんがいつまでも手当てしてあげられるわけじゃないんだから』


「ディンお姉さん、わたしの手が強すぎたら言ってくださいね」

「大丈夫ですよ。痛くないですから」

「でも、擦り傷がたくさんありますよ。薬を塗ってるだけで、こっちまでヒリヒリしちゃいます」

「ちょっとした傷ですから、数日で治ります。心配しないでください」

 ディンは、遠い日の記憶のまどろみからふと我に返った。目の前の美しい顔の持ち主に声をかけられて、意識が現在に引き戻されたのだ。ローズが丁寧に手当てをしてくれている、この瞬間に。考えてみれば、お父さんに最後に手当てをしてもらったときから、もうずいぶん長い年月が経っていた。

 お父さんは言っていた——もう自分を傷つけさせるな、と。今はもうお父さんが守ってくれることも、薬を塗ってくれることもないのだから。けれど、ディンは信じていた。もし、お父さんが今日、チョムジャン農園で起きたことを見ていたなら、きっと失望はしないだろう。かつて逃げてばかりいた相手に正面から立ち向かい、面倒を避けたいがために弱い人間のように負けを認めていた——あのワスに対して。

ティパコンおじさんが生死の境をさまよっているとき、ディンはおじさんに約束した。そして、その約束とともに、自ら炎の中に飛び込んだのだ。まるで、これから先も際限なく燃え続ける火種の中に身を投じたかのように。

 マハッタナコン家とアモーンジンダー家の問題に首を突っ込んだこと——。

 他人の揉めごとに関わるのを嫌う性格のディンがそうしたということは、これまで平穏に、ひっそりと暮らしてきたワーティンワニット家が、もう二度と元には戻れないということを意味していた。

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