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【4 Elements】アース|プロローグ「土に守られた薔薇の花」【支援者先行公開】

  • 15 分前
  • 読了時間: 17分


小説『フォーエレメンツ:アース』プロローグ

小説『フォーエレメンツ:アース』 プロローグ 土に守られた薔薇の花

「ティパコンさん、私たちは同じ土地の人間ですし、お互いの父親の代からの付き合いでもあります。ですからティパコンさんも、ご異存はないかと思いまして——息子のワスとローズさんとの縁談、私が橋渡しになればと参った次第です」

「この件については、ワスポンさんにはっきりとお伝えした通りです。娘の決断に委ねるほかないと」

「つまり、お断りということですか?」

「ええ。もしローズ本人の望みであれば、私も反対はしません。けれど、うちの娘とワスポンさんのご子息は、まだ互いを知る機会すらありません。親の世代の約束を今の子どもたちに押しつけるのは、さすがに行きすぎだと思いますよ」

 ティパコンは、訪ねてきたワスポンに対して毅然と答えた。チョムジャン農園の主として、そして一人娘のローズこと、ティッパパーの父として。確かに、二つの農園はかつて親の代から行き来し、この一帯に繁栄をもたらした開拓者同士として親しい間柄ではあった。だが、娘をワスポンの息子に差し出すことだけは、ティパコンが命を懸けてでも拒むつもりだった。

「年を取ってから約束違反で仲違いするのは、お互い本意ではないでしょう、ティパコンさん。ワスは安定した仕事に就いておりますし、私にもこの茶農園ナップアナンの跡を継ぐ息子は一人きり。農園の土地も隣り合っている。子どもたち同士が結ばれるのが、何より理に適っているではありませんか」

「申し訳ありませんが、ワスポンさん。何度お越しいただいても、私の答えは変わりません」

 命ある限り、ティパコンはローズを守り抜く——そう心に誓っていた。

 我がアモンジンダー家の血筋が、ワスポンのマハッタナコン家と結ばれることだけは、決して許さない。


「どうだった、親父。あのジジイ、今日こそローズちゃんを俺に寄越す気になったか?」

「ティパコンの頑固さは筋金入りだ。そう簡単に娘を手放すわけがないだろう」

「土地も売らない、娘も渡さない。あのジジイ、いつまでゴネるつもりだ? まさか約束を踏み倒す気じゃないだろうな」

 思い通りにならない苛立ちを隠そうともせず、ワスが吐き捨てるように言った。ナップアナン農園の主、ワスポンの一人息子にして、マハッタナコン家の全事業を受け継ぐ者--広大な茶農園を所有するの有力者という表向きの顔から、慈善家の仮面の下に隠された数々の裏稼業まで、父ワスポンのそのすべてを。

「あいつの数十ライ*の土地が押さえられないと、こっちの仕事に支障が出る。あの土地を通り道にできなければ、何もかもがますます面倒になる」

「俺にやらせてくれよ、親父。たかが花農園のしょぼいジジイ一人、俺が思い知らせてやる」

「手があるのか、ワス。何をするにしても、俺にまで火の粉が飛んでこないようにしろよ」

「任せとけって。親父が欲しがってる土地を手に入れて、おまけにあの娘も嫁にしてやるよ。一石二鳥ってやつだ。土地も女房も手に入るなんざ、最高だろ!」


「ディンさん、失礼します」

「入って」

「お客様がお見えです」

「こんな時間に誰?」

「ティパコンの旦那様です」

「ティパコンおじさんが? ケーオ、応接間にお通しておいて。すぐ行くから」

 ディンは、この農園で片腕のように働いてくれている信頼のおける部下にそう指示すると、確認していた財務書類から目を離し、手を止めた。澄んだ顔立ちの持ち主はパソコンの画面をスリープにしてから、すっと立ち上がって応接間へ向かった。事前の連絡も約束もなく、こんな夜更けにティパコンおじさんが訪ねてくるなど——その目的が見当もつかず、戸惑いが胸をよぎる。

「こんばんは、ティパコンおじさん」

「こんな遅くにすまないね」

「何か急ぎのご用ですか?」

「ディン、おじさんは気が気じゃないんだ」

「ナップアナン茶園の人たちのことですね」

 ティパコンおじさんの人となりを知るディンには、見当がついていた。敬愛するこの大人を心底悩ませることなど、そう多くはない。そのうちの一つが、マハッタナコン家——百ライ近い広大な土地を占める茶農園の一族で、法の上に立つかのように振る舞い、数えきれない汚い手口の噂が絶えない、あの家のことだった。

「ああ。今日、ワスポンが来たんだ。ローズのことを持ちかけてきた。いつも通り断ったよ」

「おじさんがそう言い続ければ、そのうち諦めますよ」

「だが、今回ばかりはもう引き下がらないだろうと思っている。ワスポンがうちの土地を狙っているのはわかっていた——あいつらの商売に好都合だからだ。そしてワスのほうは、うちの娘を手に入れたがっている。これまで何人もの女性にそうしてきたように。手に入れたら踏みにじって、使い捨てにする。ローズをそんな男の元にやるわけにはいかない」

「……」

「ディン、一つだけ約束してくれないか」

「何をですか?」

 ディンは、ふと我に返った。ティパコンおじさんの話を聞くうちに、いつの間にか思考の奥深くに引きずり込まれていたのだ。この問題について、自分のセンラック農園だけが無関係でいられるとは、とても言えなかった。

 三つの農園の土地は隣り合って続いている。最も広いのがワスポンのマハッタナコン家の茶農園ナップアナン。その隣がアモンジンダー家の花農園チョムジャン。そして、自分たちワーティンワニット家のセンラック農園もまた、チョムジャン農園と地続きの大きな農園だ。三つの農園は祖父母の代からずっと、切り離せない関係にあった。

 ワスとは同世代で、かつては友人でもあった。ローズちゃんとも幼い頃に会ったことがある。だが、あまりに長い年月が過ぎて、もうほとんど記憶に残っていなかった。ティパコンおじさんがローズちゃんを海外に留学させ、そのまま向こうで暮らすようになってからは——しかも、おじさんは娘を呼び戻す代わりに自ら会いに行くことを選んだので——ローズの消息は大人たちの口から伝え聞くだけになっていた。今会ったとしても、きっとお互いにわからないだろう。

「もしいつかおじさんの身に何かあったら——ディン、ローズを守ってやってくれ」

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