
特別編
第九章 プリックプリック
第一話
「そこの見目麗しい魅力的な才女さん」
「突然呼び掛けて何よ。しかも才女さんって」
数日後にアリサー妃の御誕生祝賀会が控える中、プリックは花輪を編むための茉莉花に追われて忙しくしている。そんな中、日焼けした肌に毛むくじゃらの髭を蓄えた男が声をかけてきた。プリックは男を見上げながら、強気に言葉を返す。
「そんな風に私に手間を掛けさせるような話し方をしないでよ、プラァイさん」プリックの目線からは、目の前の男を煩わしく思っているのが容易に伺える。「私が言葉を聞きとり、思考を働かせて、その意味を理解できるようになったのは、すべてアニン王女がご指導くださったおかげ。あまり意味不明なことを言わないでちょうだい」
「はあ。本当に、プリックのその生意気な唇を一度叩いて直したいくらいだよ。何度言ったらわかるんだ? 俺の名前はプライで、プラァイ(奴隷)じゃないんだよ。ほら、俺の口元を見ろ。プライ、な。プラァイ、じゃなくて」
プライはプリックとの会話を楽しんでいる……わけではなく、今まで一度も自分の名前を正しく発音してくれたことがない魅力的な女性に、苛立たしさを感じていた。
「どんな名前だろうと、私が好きなように呼ぶんだから、何でも良いでしょ? それとも私に何か不満でもあるのかしら、プラァイさん?」