
特別編
第八章 横やり
第四話
「そして、王子様とお姫様は、末永く幸せに暮らしていくことになりました。めでたし、めでたし」
ピンがアリンのお気に入りの童話を読み終えると、少女は眠そうな目をピンに向けてきた。その無邪気な姿に、ピンは耐え切れず、そっと少女の頬にキスをして甘い声で囁くように尋ねた。
「眠いですか?」
「まだ眠くないです。もう一つ、別の話を読んでくれませんか? 楽しくなってきました」
聞こえてきた返事は、今にも寝てしまいそうな可愛らしい少女アリンの声ではなく、床に布団を敷いて寝ている『大人に成長した子ども』プリックからのものだった。プリックは身体を起こし、寝台の上に顔を覗かせながら、ピンの話を聞いていたのだ。
「プリック……」ピンの耳に届いた声は、先ほどアリンに向けられたものとは全く違う、もはや別人の声だと言われたほうが納得できるくらい威圧感のある声だった。「早く寝なさい。アリンちゃんはもう寝るんだから」