
特別編
第八章 横やり
第三話
ところ変わって雪が降り積もる前庭では、もう一つの出来事が繰り広げられていた。レディ・アリンの確保に失敗したプリックが足を滑らせ、大きく足を上げながら雪の中に転げ落ちる。一方のアリンは、プリックに追いかけられながら雪玉を投げつけて反撃し、二人の争いは雪合戦の様相を呈していた。
ころころと転がり続けるプリックを助けたのは、意外にもアナン王子だった。彼はプリックの転がる進行方向に座り込み、その身体を受け止めたのだ。もっとも、よく考えればアナン王子がプリックを助けたのは、それほど意外ではないのかもしれない。なにしろ、貴公子グアキティの一件での活躍もあるのだ。プリックの巨体がアナン王子にぶつかり、多少の痛みはあったはずだが、それでもアナン王子は一言も発さなかった。
「ご助力に感謝します」