
特別編
第八章 横やり
第二話
「プリック姉さん。さあ、私を捕まえてみてください」
「そんなに速く走らないでくださいよ、レディ・アリン。こんなに雪が積もっていては、追いつけるものも追いつけません」
積もりに積もった雪によって、アナン王子の宮殿の前庭には、いくつもの白く小さな丘ができていた。積もった雪を思う存分楽しみ、軽やかな足さばきで駆け回るアリンと、何層にも防寒具を着込んでぷっくりと膨れ上がり、まるで戦を束ねる将軍のような姿で不格好にアリンを追いかけ回すプリックの姿があった。
「どうだ、アリンは可愛いだろう?」アナン王子が、娘と同じくらい大好きな妹に向けて、まるで独り言かのようにボソボソと呟いた。「随分、はしゃいでいるだろう?」
「アナンお兄様の娘は、本当にお転婆ですわ」
「仕方ないじゃないか。アニンのような娘を授かりたいと思っていたんだから」アナン王子が笑いながら言う。「しかし、ここまで似るとは想像していなかったよ」