
特別編
第七章 休日
第三話
「叔母様」
その日の午後、パーラワティ義姉さんがおチビさんを連れて私のもとにやってきた。アリンラダーは私がお気に入りのようで、まるで磁石が引かれ合うかのように、私の姿を見とめた途端に大急ぎで駆け寄ってきた。
「どうしたんですか、お嬢ちゃん?」
私はアリンの頭を撫でた後、構わず私の懐に飛び込もうとしてくる彼女を両腕で迎え入れた。
「アリンは、叔母様に抱き上げてほしいの」
私の抱擁を受けたアリンは、上下に飛び跳ね続けている。相変わらずの破天荒ぶりである。
「抱き上げられますかね?」私は笑い混じりにそう応じる。「叔母の大切なアリンは、もうこんなに大きくなってしまいましたらからねえ」
私はそんな風に姪をからかいながら、最後にはしっかりと彼女を抱き上げ、ワティ義姉さんのもとへと歩いて行く。
「もう少ししたら抱けなくなっちゃいそうだわ」ワティ義姉さんがぼやき始める。「アリンったら、本当に食欲旺盛なの」
それを聞いた私は、大きな声で笑った。
「何も食べないよりも、よく食べる方が好ましいじゃないですか、義姉さん」
「今日もよろしくお願いしますね、アニン王女。毎日毎日、ごめんなさい。叔母様に会えないと、アリンがいつも駄々をこねるから」
「お気になさらず、いつでも連れて来てください、義姉さん。来ない日は、私も寂しいですから」
「そう言ってくれると助かるわ」
ワティ義姉さんはその後、隣にいるピンさんと軽く世間話を交わし、車に乗って東宮へと帰っていった。母親がいなくなったことで少女が寂しがることは全くなく、代わりに私に『読み聞かせをしてほしい』としつこくせがんでくる。
暖炉の前のソファにアリンを座らせた後、私は姪に尋ねた。いつもの幸せな時間である。
「今日は何のお話を読んでもらいたいのかな?」