特別編
第五章 二度目の夜
第一話
私の初めての口付けをアニンに奪われた、雨が止まなかったあの日。
私たちの舌が激しく絡み合ったあのディープキスは、私の心臓を止めるかのような感触だった。
口内に残る魅力しかない甘いあの味が……。
私の口に絶え間なく淫らに入り込んで来て……。
期待と共に吐き出される吐息と混ざり大きくなる……。
アニンの厭らしい口が私の口から離れ、私の耳元へと向かう。聞こえてきた彼女の囁きで私の心臓は止まりそうになる。
「これはフレンチキスと言うの」
「……」
「愛し合う恋人にしか向けない欲と気持ちを向けたものだわ」
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