特別編
第四章 切れ間
第二話
「こんにちは」
高等学校の図書館で図書委員を務めているヘレンさんが気さくな言葉とともに笑顔で私たちを迎えてくれた。彼女はこのイギリスにおける淑女の一人で、私はこの人を心から尊敬し、紛れもなく『マダム』という言葉に相応しい人だと私は考える。へレンさんの見た目、所作、考え方の一つ一つを見れば、彼女がこのイギリスにおいて最も礼儀正しい人の内の一人だと気づくのは容易であるだろう。
「お久しぶりですね」
「はい」
エマはヘレンさんの声掛けに短く返答し、私はその後ろから笑みを送る。
「あなたたちの為に席を取っておきましたわ」ヘレンさんは優しい笑みを受けべている。「私にそちらまで案内をさせて頂いても」
Comments