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ロイヤル・ピン|第四十八章 結婚式【限定公開】



ロイヤル・ピン第四十八章

第四十八章

結婚式


 ピランティタは、鏡に写る自分の姿を、何の感情もない視線で見つめていた。そこに映し出されている自分の姿はとても美しかった……黒い長髪は、小さく整った顔を際立たせるように結われ、茶色い瞳に添うまつ毛は、くるりと絵画のような弧を描いている。白く滑らかな両頬には、桃色の口紅が塗られ、もとの美しさを何倍にも膨れ上がらせていた。

 彼女は、自分のために仕立てられた紫色の絹のパトゥンを身に纏い、その傍らに従えた男性は、叔母様がお作りになった蓮の花びらを模した桃色の肩掛けを携えていた。その帯にはタイの伝統的な紋様が刺繍されており、叔母の優しさと卓越した技量が余すことなく発揮された、とても美しい一品である。彼女がその帯を肩に掛けると、彼女の肩元の美しい肌はより際立ち、見る者の視線を奪うこと間違いなしであった。


「この帯を作ったのは、アリサー妃の時以来だわ。たった一人の姪......ピン、あなただからこそ、私はこの帯を真心を込めて作ったのよ」


 叔母がどれほど優しい言葉をかけても、少女の心が癒されることはなかった。

 最後の仕上げとして、ピランティタが身に付けたのは、アリサー妃から拝受したルビーを基調とする耳飾り、首飾り、そして腕輪などの装飾品だった。彼女は、鏡に映る自分自身に侮蔑するような視線を向け、その無様な姿を強く憎んだ。

 ピランティタは悶々と、自問自答を繰り返していた……。

 もし、あの時、アニン王女から示されたもう一つの道を選んでいれば......それから先の時の流れの中で、どれほどの苦しみを、あるいは幸せを掴むことができたとしても……。

 アニンラパット王女という愛おしい存在だけは、私のそばにいてくれたはずなのに……。

 疫病神のように扱われて、お顔を拝むことすらできなくなる、そんなことはなかったはずなのに……。

 なす術もなくアニンラパット王女の脛にしがみつき、戯言を吐き出して無様を晒した、あの日。

 ピランティタの心は、もはや回復を望むことすら難しいくらい、完全に崩壊してしまった。

 今、心に感じている悲嘆を、アニンラパット王女のせいにすることなど......そのような、天地をひっくり返すような真似をすることなどもちろんあり得ない。むしろピンは自分の行いを、自分の選択を心から責め、悔やんでいた。

 もし時間を巻き戻せるのなら……。

 激しい苦しみと後悔の上に成り立つこの道を、もう一度選ぶことはないだろうと、ピンは心からそう思った。


「アニン王女はこちらに戻ってくると思う、プリック?」

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