シークレット・オブ・アス|第二十六章 イタリア 後編【支援者先行公開】
- ミーナム
- 7月19日
- 読了時間: 20分

シークレット・オブ・アス 第二十六章 イタリア 後編
太陽の光が部屋を照らし始め、明るくなると、女優は最初に身じろぎした。まだ布団の中でぐっすりと眠る相手に寄り添い、温もりを感じながらずっと寝ていたかったのに。それどころか彼女が起き上がろうとした途端、隣で眠る人はその温もりが消えたのを感じ取ったように、むしろ逃げるように身体をずらしてしまった。いつもならラダーが先に目を覚ますはずなのに、今日は自分のほうが早く起きてしまった。でも、その理由を思い出すと、どうしても顔が赤くなってしまう。
昨夜プールから部屋に戻った瞬間、私たちは片時も離れられなかった。バスルームで身体を洗うときでさえも。
「アーンは朝ごはんの注文の電話をかけに行きますね」
「うん……」ファーラダー医師は動こうとせず、ただ眠たげな声で返事をするだけだった。本当に疲れ果てているらしい。
「センセイ、早く起きてね。一緒に朝ごはん食べようよ?」
さすが五つ星ホテルだけあり、注文を入れると間もなく丁寧に教育を受けたスタッフが朝食を載せたワゴンを押してやってきた。
女優はスタッフにテラスのテーブルへ料理を並べるよう頼んだ。そこからは朝の景色がよく見え、目の前の川はまるで宝石をちりばめたように朝日にきらきら輝いている。
スタッフ二人にささやかなチップを渡して見送ると、まだまだ起きる気配のないベッドの上の人を起こす時間だ。女優はまとっていたガウンの紐をほどき、ゆっくりと脱ぎ去ると、白いシャツだけの姿になった。
「センセイ、ねえセンセイ、起きてよ。アーンはもうお腹ペコペコだよ?」小さな声で呼んでも、まったく動かない。二度目に呼んでも、ほんの少し体を動かしただけ。三度目には目をうっすらと開けてこちらを見たが、すぐにまた目を閉じてしまった。女優はその仕草にくすっと笑いながら、昔のように、センセイがベッドからなかなか起きようとしなかった時と同じことをしてみることにした。
相手の身体の上にゆっくりと体重をかける。すると眠りの世界に浸っていたラダーも、さすがに目を開けざるを得なかった。ラダーは自分の上に乗った細い身体の持ち主に疲れ混じりの笑顔を向け、毎朝の習慣であるようにその額にキスをする。もし彼女が起きなければ、この軽やかな人は子供のように飛び跳ねてでも彼女を起こすだろう。
女優が再びベッドに横たわると、センセイは起き上がって自分の支度を始める。だが、女優は唇をきゅっと噛み締めなければならなかった。センセイが全く服を身につけないままでいるからだ。その姿を見ているだけで、日に日に妄想を楽しむ変態な女になっていってしまいそうである。
テラスでの朝食はいつもより遅い時間だったけれど、それでも期待を裏切らない素敵な時間だった。朝の空気は見る者をリラックスさせ、爽やかな気持ちにさせてくれる。ラダーは軽くガウンの前を合わせ直すと、白いシャツを着てテラスの手すりに寄りかかりながら川を見つめている女優の、幸せそうな横顔をじっと見つめた。
女優はきっと知らないのだろう。自分が着ている服があまりにも薄くて、体のラインがはっきり透けて見えることを。特に太陽の光が差し込むと、まるで裸の身体を見ているような気持ちになってしまう。
「どうしましたか、センセイ?」女優は不思議そうに尋ねる。コーヒーカップを口に運んで相手が、自分を妙な目つきでじっと見ていたからだ。振り返ると、その視線はずっと彼女に注がれていた。





