シークレット・オブ・アス|第十章 逃げるほどに出会ってしまう【支援者先行公開】
- ミーナム
- 5月17日
- 読了時間: 22分

シークレット・オブ・アス 第十章 逃げるほどに出会ってしまう
「アーンちゃんに頼まれてたスケジュール表だよ」スージーはマネージメントを務めている女優に、紙を手渡した。ここは彼女が五カ月前に購入し、家族に許可を取って一人暮らしを始めたばかりの個人用マンションだ。一人娘を外で暮らさせることを、軍人の父親がなぜ許したのか、いまだに謎だ。
「ありがとうございます、スージーねえさん」
「でも、なんで七日間もびっしり仕事を入れさせたの?」スージーは不思議そうに、スケジュールをじっと見つめる女優を見た。実はその日の夕方、目元が腫れぼったい彼女の姿を見て問いかけようとしたのだが、何となく怖くて聞けなかった。それに、一番気になるのは、彼女が例の美人医師と妙なほど親しげだったことだ。聞きたくて仕方がないのに、どうしても口が重くなってしまう。
「少し、休みたいんです」
「休みたい!?」
「ほんの数日間だけですよ、スージーねえさん」
「どこか行くの? 事務所に報告しないといけないんだからね」
「体調が悪くなる予定なんです」
「は? あんたって予知能力でも持ってるわけ?」スージーは呆れ顔で、自分にニコニコと笑いかけてくる女優を睨みつける。本当に綺麗だから許されるけど、これが別人だったら頭がおかしくなったのかと思うところだ。病気になる日を予知できるなんて。
「ところで、病院の広告の件ですが……」
「ああ、それ伝え忘れてたわ。撮影日を二日追加したの。セントキング病院から、最初の撮影に二日間必要だって言われてね。その分、きちんとギャラも追加してくれるそうよ」
「でも、なんでまた私を指名したんでしょう?」女優は、テレビから流れてくる美人キャスター、ペートラーが読み上げる朝の犯罪ニュースに耳を傾けながらも、再びマネージャーに向き直った。
「それは知らないわよ。気にしない方がいいわ」スージーは、セントキング病院の広告撮影のために空けてある二日間のスケジュールを、真剣な顔で見つめ続ける女優を訝しく思った。どうやらセントキング病院に関することなら、何でもサニターダー・ポンピパットの興味を引くらしい。バナナをわざと食べてアレルギー症状を引き起こし、しかも必ずセントキング病院に連れて行けと強く言い張ったくらいだ。他の病院は絶対に嫌だと。
「今日はどんなシーンを撮るんでしたっけ?」