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シークレット・オブ・アス|第七章 初めての贈り物【支援者先行公開】

  • ミーナム
  • 4月27日
  • 読了時間: 11分

シークレット・オブ・アス 第七章

シークレット・オブ・アス 第七章 初めての贈り物

 美しい女優が涙を流した姿と、すすり泣く声。それが心に焼き付いて離れず、ラダーは車で家に帰って休む代わりに、自分の研究室へ戻って椅子に腰を下ろした。今日もまた、あの冷酷な女性を無視できるほど、自分の心が強くないのだと痛感した。バレンタインには何の意味もない。なのにどうして、わざわざ見舞いに行ってしまったのだろう? 本来なら自分の仕事でも何でもないのに。

 甘い瞳が引き出しの中にあるペンケースを見つめる。その瞳には、悲しみ混じりの笑みが浮かんでいた。別れを告げられた日に捨ててしまえばよかったのに、最初に貰った贈り物をいまだに取っておいてしまっている。美しい思い出は過去のまま残しておくべきなのに、それでもラダーはどうしてもこのペンを捨てられない。

 ペンケースを開けるだけで、瞳にははっきりと悲しみが浮かぶ。女性向けの小さな金色のペン。そのペンはかつてあの女性が「患者さんのカルテを書く時に使ってほしい」と言って渡してきたものだった。「これを見るたびに、私たちがお互いをいつも想っていることを思い出してね」と。

 甘い記憶が再び笑みを浮かばせる。たとえそれが過去のことだとしても。

 マンションの扉を開けたが、いつもと違って灯りは一つも点いていなかった。恋人が「部屋で待っている」と言っていたのに、なぜこんな真っ暗なんだろう? 普通なら、先に来ていれば部屋中が明るくなっているはずだ。ファーラダーセンセイの愛しいアーンは、一人の時は暗闇を嫌がるから。

「アーン? アーン、部屋にいるの?」もしかしたらかわいい恋人がまた何かいたずらでもしているのかと声をかけてみたが、返事はない。部屋にはいないようだった。

 ラダーは入り口近くのスイッチをすぐに押した。明かりが灯ると、部屋の中がよく見えた。部屋全体が色とりどりの風船と明るくカラフルな紙で飾り付けられている。

「ハッピーバースデー、アーンのセンセイ」壁に飾られたメッセージを見て、ようやく今日は自分の誕生日だったと気づいた。だが、主役自身は仕事に夢中で、自分の誕生日すら忘れてしまっていたようだ。

「センセイ、お誕生日おめでとうございます」可愛らしい声とともに、大きなアイスクリームケーキを持ったアーンが現れた。白いドレスがよく似合い、まるでお姫様のようにかわいい。

「すっかり忘れてた……」

「早くお願い事して、ケーキ溶けちゃいますよ」

「センセイのお願いは、アーンがずっとセンセイをたくさん愛してくれること。そして私たちの愛が毎日美しく続きますように」

「願いごとをそんな大声で言う人がいますか?」小さく文句を言いつつも、恋人のためにサプライズを準備した張本人の頬は、真っ赤になっている。ろうそくの火が消えると、細い手が恋人の手を掴んで一緒にリビングに向かった。

「照れてるの?」

「照れない方がおかしいですよ、あんなお願い……」

「センセイは本気で言ったよ」アイスクリームケーキをテーブルに置きながらも、ラダーの視線はずっとケーキを取り分けている恋人の姿を追っていた。

「意地悪」

「意地悪じゃないよ。アーンのこと、本当に愛してるの」甘い愛の言葉に、聞いている方はいつまでも照れてしまう。

「アーンもセンセイのこと、大好き。すごく、すごく大好きですよ」そう告げると、アーンは誕生日の主役にケーキを一口ずつ食べさせる。ラダーの甘い笑顔に、食べさせる側は思わず目を逸らしてしまった。

 互いにアイスクリームケーキを食べさせ合い、二人は幸せなひとときを楽しんでいた。テレビからの音声はもはや二人にとって意味がなく、部屋の主とその恋人はテレビ番組よりも、お互いに口づけを交わして恥じらいの笑みを浮かべるほうがずっと大事だった。

 ラダーはお風呂上がりにバスローブ姿で戻ってきた恋人に微笑みかけた。いつもはベッドに行く前に保湿クリームを塗るのに、今日は違った。恋人は何かを取りに行った。贈り物の箱を見たラダーは、読んでいた本を閉じて横に置いた。

 かわいい箱を見ただけで、中に何が入っているのかすぐに分かった。ラダーは恋人の細い腰を抱いて膝の上に座らせると、柔らかい唇を両頬にそっと触れさせた。

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