シークレット・オブ・アス｜第六章 バレンタイン【支援者先行公開】
- ミーナム
- 4月26日
- 読了時間: 13分
シークレット・オブ・アス 第六章 バレンタイン
美しいコートをぎゅっと引き寄せて、吹きつける冷たい風やひらひらと降る雪が体に入り込まないようにする。美しい少女の顔に浮かぶ笑みは、外がほとんど人通りもないほどの寒さだというのに、まったく薄れることはなかった。華奢な手で食材の袋を胸元に抱き寄せ、恋人が帰ってくる前にマンションに到着しようと、足早に歩みを進める。
恋人として過ごす初めてのバレンタイン。細くしなやかな指でエプロンを着けると、タイから持ってきた料理本を開いた。外国への留学は家族の望みで、断ることができなかった。両親の言う「将来役立つことになる」という理由を否定することもできなかった。二人は知らないだろうな、異国での暮らしがどれほど寂しいかって。でも、今は感謝の気持ちでいっぱいだった。この留学のおかげで、「愛」というものを知ることができたから。
「センセイ、アーンの料理、気に入ってくれるかな？」
「気に入らなくても無理やり好きになってもらおう」
「美味しくなくても、美味しいって言わせちゃう」自分に問いかけ、自分で答える。その美しい顔には微笑みが浮かんでいる。ファーラダーセンセイ、美しくて優しいお医者さんの彼女は、自分の心を丸ごと奪ってしまった。
付き合ってもうすぐ一年。でもセンセイは、最初の日と変わらず、ずっとかわいいままだ。そして何より大切なのは、センセイはまだキスしかしてくれない、ということ。理由を尋ねるたびに、ただ微笑んで「まだ未成年だから」と言うだけ。でも今日は違う。もう何カ月も前に二十歳を迎え、大人になったのだから。
細い腕時計をもう一度確認する。料理はちょうど時間通りに完成し、まだ他の準備をする時間もある。センセイの広々とした寝室に視線を移すと、顔が自然と熱を帯びる。恋人同士なのに、センセイは私を泊まらせてくれない。同じマンションに住んでいるのに、許されるのは遊びに来てゆっくり過ごすことだけなのだ。
寝室はいつも通り完璧に片付いていて、ベッドシーツにはほとんど皺一つない。時々信じられないほど、センセイは綺麗好きで几帳面だった。何度訪れても、それは見せかけだけのものではなかった。
「センセイを待ってる間に、お風呂に入っておこうかな」
一方のラダーは、スマホで時間を確認すると表情が曇った。恋人との約束時間を一時間以上も過ぎていた。病院にはまだ患者がたくさんいて、帰ることができない。
看護師から教授が医局で話したがっていると告げられ、彼女は疲れ切ったため息をついた。新しい知識を学ぶのは好きだけど、今日は恋人と過ごすべき日なのに。
帰ったらまた拗ねちゃうかな？ 私のかわいい恋人はすぐ拗ねたりいじけてしまうから。
小さなプレゼントを白衣のポケットに入れると、看護師に急かされて医局へ向かった。看護師も早く帰りたいのだろう。今日は特別な日だ。
マンション周辺や路面店は可愛らしく飾られ、多くの恋人たちがプレゼントを買い求めていた。ラダーは急いでマンションに入った。約束から二時間も遅れてしまった。恋人はどれだけ不機嫌になっているだろう。
テレビの前の長いソファに横になり、恋人はすやすやと眠っていた。その姿を見て、ラダーは思わず微笑んだ。待ち疲れて眠ってしまったようだ。彼女はそっと細い指で恋人の顔にかかった髪を優しく払った。
「アーン、センセイが帰ってきたよ」
