第三十八章 公表
あの後、私は一人きりでヴィラへ帰ってきた。家の前には九官鳥と話しているエンエイさんがいて、私に何か疑問を感じたように挨拶してきた。
「何か忘れ物ですか?」
「いいえ、何も。ちょっと目眩がしたので、サムさんに一人で市場へ散歩に行ってもらったんです」
元気が無さそうな私の様子を見て、話しかけたその人は少しだけ眉を持ち上げた。
「どうしたんですか? 何か辛そうに見えます。ここまで遊ぶために来たんでしょう?」
「あのう……」なんと答えたらいいのか全然分からなくって、他の場所を見ていた。すると、まだサムさんの黄色い愛車の周りを、グルグルと回っているゲンロンさんが目に入ってきた。「ゲンロンさんは、ドゥアン・ペンさんに興味津々なんですね」
「ドゥアン・ペンさん?」
「車の名前です。サムさんはドゥアン・ペンという名前と、スウイ・イェン・ヘン・アラームという名字をつけたんです」
「素敵ですね。名字まであるなんて」
エンエイさんはクスクスと笑っていた。ドゥアン・ペン=スウイ・イェン・ヘン・アラームさんという名前を伝えた私は、名前を決めたあの人への愛おしさが湧きあがってきて、一緒に笑ってしまった。
「ゲンロンが、実は、ドゥアン・ペンさんが好きって、そう言った方が正しいかもしれませんね。そうじゃなかったら、あんなに車の周りでウロウロしないと思います。昨日の事……いつもああなんです。自分よりお金やいい物を持っている人がいたら、いつもその人に嫌味を言うタイプで」エンエイさんは頭を少し振ってから頬を緩めて笑った。「新車を買ってあげないといけないのかな。これ、おいくらですか?」
「分かりません。でも確かに値段はかなり高いそうです」
ヴィラのオーナーは考え込みながら、その黄色の車を見つめた。本当に買いそうな勢い。悩んでいる様子の華奢な人を見て、私は驚いた。
「本当に買うんですか?」
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