第十二章 サイン
サムさんもティーさんも帰った。ノップと私は、サムさんが買ってきてくれたお土産のエビをかじっている。いや、ノップが一人で食べているって言った方が正しいかも。私はただぼんやりと座っていたから。まるで、心がどこか遠いところまで飛んで行ってしまったみたいに。
私に「こらっ!めっ!」と言ってから、なんの説明もせずに車で走り去ったあの人の所まで……。
「サムさんの友達のイケメンと、仲良くしてるのか?」
私は夢から目覚めたみたいに、質問したノップの方を見た。
「ティーさんのこと?」
「うん」
「そりゃ、サムさんの友達だからね。すごく仲良しとまでは言えないんだけど」
ノップはエビから目線を外して、聞きたいことが失礼にならないか遠慮して迷っているようだった。それから自信なさげに喋り始めた。幼馴染なんだから、そんな気を遣う必要ないのに。
「そこまでじゃないなら……なんで一緒にいたんだ?」