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クレイニアム|第三十六章【支援者先行公開】

  • 2月7日
  • 読了時間: 9分

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小説クレイニアム第三十六章

小説『クレイニアム』 第三十六章

「……これはすごいですね」

 ピンが口を開き、視線をぐるりと巡らせた。そこは市街地の中心からさほど離れていないビルの四階にある、広い空間だった。周囲を摩天楼に囲まれ、彼女は八階建ての雑居ビルの中に立っている。外見はごく普通の建物だが、中に入ると各地から集められた骨董品で埋め尽くされていた。目を凝らせば、正規のものもあれば怪しい経路で手に入れたとおぼしきものも混じっている。

「何か気に入ったものはありますか?」

「ええと……」女博士は言葉を濁し、驚きの表情を見せているソンウットの方を見やった。彼は少し離れた場所で油絵を眺めており、ピンにはそれが何なのか見当もつかない。「少し歩いて見て回ってもいいですか」

「ご自由にどうぞ」そう言うと、パヌワットはソンウットのそばへ歩み寄って行った。

 ピンは落ち着いた足取りであちこちを見て回った。今回の訪問で何か収穫があるのか自分でもわからない。どうやらパヌワットは、これらの品で彼女の気を引こうとしているらしい。彼が欲しがっているスカラベ以外にも、ソンウットが漏らしていたとおり、海外からの骨董品を仲介してくれる取引人として彼女を抱え込みたいのだろう。しかも専門家として真贋を鑑定させるつもりまであるようだ。

 一石二鳥どころか一石三鳥。

 要するに、これらの品を見せて『取引で得られる金はこんなに大きい』と実感させたいわけだ。

 正直なところ、ピンは頑なな性格ではない。むしろ柔軟な性格で、少々の癇癪持ちではあっても融通は利く。そうでなければ、ブアにあれほど歩み寄ることもなかったはずだ。

 彼女はスマホを取り出し、すぐにブアへ居場所を知らせるメッセージを送った。少なくとも帰ったときに「なぜ連れて行ってくれなかった」と責められずに済む。思えば、いまの自分とブアの関係は恋人とほとんど変わらない。ただ、あのブアローイが認めようとしないだけだ。

 とはいえ、ピンは自分で『待つ』と言った。ならば最後まで守らねばならない。

 彼女はメッセージを打ちながら奥へ進んでいき、やがて建物の一角で予期せぬものに出くわした。

 目の前の光景に、ピンは言葉を失った。

 ガラスの展示ケースに横たわるのは、人間の遺体。乾いた褐色の皮膚が骨に張りつき、まぎれもなくミイラ化の処理を経たものだ。布で巻かれていないため、体幹から手足までが剥き出しのままはっきりと見て取れる。

 彼女は息を呑み、その異様な姿を凝視した。あの墜落現場で見た謎の頭蓋骨を目にしたときと同じ感覚が押し寄せる。胸の奥で、不安がざわついていた。

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