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クレイニアム|第二十四章【支援者先行公開】

  • Nalan
  • 2025年12月27日
  • 読了時間: 12分

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小説クレイニアム第二十四章

小説『クレイニアム』 第二十四章

 ピンは研究棟の中にある自然人類学ラボへと足を運んだ。目に入ったのは、例の厄介なミイラ頭蓋の前に立つラボ主任の姿だった。白いラテックスで作られたクリーンなレプリカを前に、ブアは訪問者に気づいても振り返らなかった。

 頭蓋の額中央には白いピンが一本だけ打ち込まれ、アルファベットの【B】が記されている。そこは「グラベラ」と呼ばれる部位で、眉間の最も隆起した点と顔の正中線が交差する箇所だ。ブアは、このような計測点を少なくとも十六か所は打ち込んで、組織や筋肉の厚みを設定してからでなければ造形を始められない。

 こうした計測点――オステオメトリック・マーカーと総称される――は、頭蓋に限らず上腕骨や大腿骨など、すべての骨に存在する。

 筋肉や腱が付着した痕跡が表面に残っており、洗浄済みの骨なら肉眼で確認できる。それを基準にしてこそ、復顔の際に各筋肉を正確な位置に置き、民族的特徴を反映させ、最もリアルな顔貌を再現できる。

 とりわけ、顔の再現が犯人追跡に直結するケースでは重要だ。

 民族ごとに、各ポイントの基準値は異なってくる。

 頭蓋の隣には、造形用の粘土のトレーが置かれていた。

「もう始めたの?」背後から声がして、ブアは振り返って小さくうなずいた。

「二、三カ月はかかると思う。ゆっくり進めたいし、二次元の再現はもう済んでるから、本業の邪魔をしたくない。だから今は一番深い層の筋肉から置いてるところ」そう説明してからブアは問い返す。「で、何か用?」

「最初は相談があったんだけど……あと一時間で終業だし、それならあんたが造形するのを見ていたいなと思って」

「やめて。誰かに見られるとプレッシャーになる」ブアはそう言って、タブレットを何度か操作した。すぐに上方のモニターに顔面の筋肉図が映し出される。「言いたいことがあるなら、ここで言って」

「黙って見てちゃダメ?」思いがけない言葉にブアは眉を上げ、癖で手の甲で眼鏡を押し上げた。「ただ、あんたが仕事してるのを見るのが好きなだけ」ピンはそう言って、背後の腰の高さほどのキャビネットの上にひょいと腰かけた。

「三年間、机を並べてきたのよ、ピン」

「そうよね」と女性副所長は答えた。「不思議ね、こんなに魅力的だなんて思ったことなかったのに」低く響く声での褒め言葉に、聞いていた人は思わずドキッとし、顔が熱くなるのを感じた。「たぶん、私の感じ方が鈍いだけかもね」

「……やっぱり今日はやめ。片付けて帰る」そう言って話を逸らすのは、相手がまだ答えられないことを言い出すのを恐れたからだ。「上司に見張られてたら、集中できない」

「でもここはあんたのラボでしょ。一番偉いのはあんたじゃない」

「じゃあ、代わりにラボ長やってみる? 興味ある?」

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