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クレイニアム|第十九章【支援者先行公開】

  • Nalan
  • 2 日前
  • 読了時間: 10分

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小説クレイニアム第十九章

小説『クレイニアム』 第十九章

「男性」

「ん?」 ノート型十四インチの画面を凝視していたピンが声を上げた。視線をブアへ向ける。隣に立つ彼女の手には、十二インチのタブレットと白いペンが握られている。「誰のこと?」

 問いに応じ、ブアはタブレットを差し出した。画面に映し出されていたのは、無名の男性頭蓋から再現された二次元の顔。丸い輪郭、小さな眼窩は奥まっており、厚い唇に大きな鼻が目立つ。

「この頭蓋よ」ブアが言う。「男性。青年から中年。エックス線で頭蓋の骨板を確認して各部位のスコアを平均化したところ、年齢幅は三十五から六十五歳」

 頭蓋の骨板による年齢推定は幅が広い。青年から中年になると板は癒合して滑らかになるが、逆に新生児から若年期では成長途中のため判定がより正確になる。

 新生児の頭蓋骨板は癒合しておらず、いわゆる「泉門が柔らかい」という言い伝えの理由でもある。軟骨状で未発達なため、エックス線にかけると縫合線が明瞭に見え、年齢に従って少しずつ閉じていく。

 成人から老年期になると骨板は完全に癒合し、さらに六十五歳以降には骨の劣化や粗鬆が顕著になる。

 法医人類学者はこの知見を基に年齢を推定する。頭蓋以外にも、大腿骨や上腕骨、手指や足趾の骨端からも推測は可能だ。

「丸顔。鼻腔は卵型。眼窩はやや深い」ブアは続ける。「エックス線では下顎骨が骨折しており、顔の正中矢状面から右に一センチほどずれていた」一拍置いて、彼女は言葉を継いだ。「総合すると……」

「モンゴロイド」ピンが先に答えた。「やっぱりね」

「歪んだ顎をミリ単位で補正したの。ペン先が削れて使えなくなった。新しいの買う費用、請求していい?」

「寝坊助な上にケチだなんて」予算決裁者の声が冷ややかに響く。「五日で? どうやったのよ」

「私じゃない。ソフトがやってくれる。使用料が私の五カ月分の給料に相当するんだから、私より正確で速くて当然」彼女は乾いた笑みを浮かべた。「でも結局、肩が凝るまで操作してた。筋肉のテクスチャーは難しいし、顔の深浅も全部自分で調整しないと不安で」

「私はやっぱり、三次元を手作業で起こしたのを見たいね」ピンは言った。「細かい作業は得意でしょう」その言葉に、ブアは睨み返す。

「それは……あんたの方が知ってるでしょ」

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