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クレイニアム|第十八章【支援者先行公開】

  • Nalan
  • 4 日前
  • 読了時間: 9分

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小説クレイニアム第十八章

小説『クレイニアム』 第十八章

 このところ……良いことも少しはあった。けれど胸を張って『幸せ』とは言えなかった。 実際、ピンとの出来事は、ブアにとって人生でそう何度も巡り会えない『良いこと』の部類に入っていた。いつか終わりが来ると知りながらも、それはその時になってから考えればいいと、自分に言い聞かせていた。

 だが今日は――ブアにとっては『良い日』ではなかった。

 飛行機事故で発見された謎のミイラの頭蓋骨。その年代測定の結果が、長い順番待ちを経て二時間前にメールで届いたのだ。

 彼女はついさきほど、それを開封しプリントアウトしたばかり。

 白いA4サイズの紙が、震える手の中で揺れていた。何度も、何度も視線を走らせる。依頼した研究室にも直接電話をかけた。結果は三度も再検証され、通常手順どおり九十五パーセントの確度が保証されているという。結論はひとつ。

 古いものではない。ピンヤーがエックス線画像から推測したとおり、その推論を裏づける結果だった。

 つまり――それは『ミイラ』ではある。だが、我々が知るような古代のミイラではない。正確な年代測定のプロセスにのせれば、たしかに『若すぎる』。

 ブアは同じ行を、数え切れないほどこの一時間で読み返した。

 そしてプリントを握りしめたまま、研究室を飛び出す。駆け足は、やがて全速力へと変わった。目指すは五階――副所長室。胸の奥で願った。どうか、彼女がもう着いていますように、と。

 ノックも忘れ、勢いよく扉を開け放った。

「ピン!」

 机の向こう、窓に背を向けて椅子に腰掛けていた彼女が、外の景色に目を投げながら過去の日々を反芻していた。もちろん、その胸中に浮かんでいたのは、駆け込んできた友との出来事でもあった。

 騒がしい声に振り返り、ピンは立ち上がる。

「どうしたの、私が恋しくなったの? バイブア。言ったでしょう、一緒に仕事に出ればいいって」

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