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クレイニアム|第三章【支援者先行公開】

  • Nalan
  • 5 日前
  • 読了時間: 9分

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小説クレイニアム第三章

小説『クレイニアム』 第三章

 外から響く足音に、半ば眠りかけていたブアは暗闇の中で目を開いた。手を伸ばして時計を確かめる。針は深夜二時二十八分を指していた。

 専門分野だけでなく、睡眠にかけても自他ともに認める達人だと自負している。しかし、見知らぬ土地での一夜はさすがに神経が休まらない。あと一時間以内には眠りにつかないと、翌朝は疲れたまま目覚め、急を要する仕事に支障をきたすだろう。

 それなのに――外の足音が眠りを乱す。(こんな時間に誰が歩き回ってるのよ。まさか土地の神様じゃないでしょうね)

 だが、夕方にはきちんと手順を踏んで許可を請う儀式は済ませたはずだ。夢に出るなら、せめて眠りについてからにしてほしい。初日の夜からこれでは、とても身が持たない。

 博士は体の向きを変え、背を向けていた相手に目をやった。夕方からずっとこの態度だ。ピンヤーは嫌味を繰り返し言ってきたが、ブアは黙して応じず、睡眠を優先した。彼女にとって眠りを邪魔される方がずっと耐えがたい。もしこの調子で続くなら、いっそ本部テントに移ってしまおう――そう考えていた矢先。

 ピンヤーも身じろぎし、ゆっくりと手を枕の下へ滑り込ませた。

「……ライトをつけないで。声も出さない。音がしても外へ出ないで」短く囁くと、彼女は立ち上がり、暗闇に「カチリ」と小さな音を響かせた。

 状況は分からない。だが、胸騒ぎは明らかに悪い方へと告げていた。ブアは忠告に従うしかなかった。息をひそめ、微動だにできない。やがて彼女の『(不)仲の友』が前方へと忍び足で進んでいく気配がした。

 ピンヤーは入口のジッパーを極力静かに下ろし、わずかに隙間を開けて外をうかがう。

「……初日からこれか。ここの地霊は随分荒っぽいわね」

 呟きとともに彼女の姿は外へ消えた。残されたブアには祈ることしかできない。すべて無事に過ぎ去るようにと。

 だが――

 パァン!

 銃声。願いは打ち砕かれる。

 間を置かず、二発目。そして三発、四発……十発を超えて響いた。

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