第九章
瞬く間に
「何故、私はここからとても遠い場所で勉学をしなければならないのですか」
私は、アナン王子が住む東宮殿の書斎で分厚い外国語の教材を読み進めている際に、過ぎる時間の中で突然口を開いた。
誰の目も届かないところでは、私たち兄妹は形式的な作法に飽き飽きし、敬語等を使わず砕けた会話をする。
「……」
長兄はすぐに口を開こうとはしない。読んでいる漫画の檸檬色の頁をめくり、冷静にクスッと笑みをこぼす。
「じゃあ、アニンには行かない理由があるのかい」漫画から視線を逸らさずに応える。
「理由は……」私は返答に困る。
「理由は?」今度は漫画を閉じ、眉を寄せ、私に問い返してくる。
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