第八章
回答
真夏の猛烈な日差しと共に、吹かれた風が胡蝶旃那の葉をかすめ、大樹の木陰で白い鉄製のヴィンテージチェアに座っていたレディ・ピンの頬へと落ちる。
足元の地面はあたかも、今にも白くなってしまいそうな胡蝶旃那の薄桜色の落花で彩られているように、辺り一面が覆われている。桃色と深紅に成った花は木々の上で緑葉に囲まれながら風に揺られ、全ての生命が等しく持つ摂理を受け入れるように、白く色抜けし、力なく枯れ落ちる時を待つ。
「ピン……ここにいたのね」
パッタミカ王女は御身の姪の向かい側に腰を下ろし、強張っていた表情が和らいだ様子が目に映る。
「はい」
レディ・ピンはいつもと変わらぬように、叔母に返事をする
「今はプラムマンゴーの果物彫刻をしているのかしら」
パッタミカ王女は水が半部入った茶碗とその隣に積み上げられた黄色い果物をしばらく見た後、そう尋ねた。
「はい、そうです、叔母様」
レディ・ピンが叔母様と言葉を交わすときは、今もなお最上級の言葉遣いを心づけている。
「今はもう……上手になったわね。前は叔母が手を添えて皮をむいていかないと、一つ一つが完成しなかったのに」
パッタミカ王女はレディ・ピンの小さな手の平にある彫刻された金色の果物を見て、強く関心する。レディ・ピンが彫刻しているプラムマンゴーの新鮮な皮には、恐らく貝殻模様の彫刻を行おうとしている事が伺える。
「でも、何故レディ・ピンはこんなにも沢山の数の果物を彫刻しようとしているのかしら。