第六章
ピンの寝室
その頃、プリックは、アニン王女から仰せつかった命令を遂行するための作戦に頭を悩ませていた。レディ・ピンの部屋から「何かしら」を盗る、その為に部屋へと入る手口を、探るも何も、思いつかないのだ。しかし、それもアニン王女の策略の内で、プリックには想像も付かなかった。
『相談したいことがあります、パッタミカ叔母様』
プリックはあの事をよく覚えていた。パッタミカ王女が、数週間後に帰国される第二王子であるアノン王子の迎え入れ宴会の件で太子様にご拝謁される際に、アニン王女がお二人にご相談をされたことを。
『叔母に相談とは、どんなものなんだい』
『恐らく、やんちゃの域を出ないのだろうな』
太子様は、愛おしいという目線をご自身の最愛の娘へと向け、笑いながらそう仰った。
『お父様に向かって話しておりません』アニン王女のその声は、変わらず明るく可愛らしい。『私はただ、蓮宮でレディ・ピンとお泊りがしたいだけです』
『なぜに突然泊まりたいと申す』太子様は娘に問い返すも、その訳など二の次と感じさせるほど、その声は先ほどよりも温かい。
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