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ロイヤル・ピン|第五章 書斎【限定公開】



第五章

書斎


 蓮宮の書斎はとにかく狭い。それはこの宮殿内の五角形の形状からなる部屋であるからだ。そこには、天井にまで届きそうな大きな円窓が五面全てに張られ、翠玉色で装飾されている。

 部屋にある簡素な書机は各窓から差し込まれる日光をしっかりと受けれるように考え抜かれた位置に佇む。そして、黄ばんでいる古い紙の本がぎっしりと並ぶ本棚に覆われ、過去を思わせる匂いが部屋中を覆っている。


「叔母様は書き写しを罰として命じたのに、なぜアニンは絵を描いているのですか」


 二人の少女は誰にも告げずに昨晩祭りへ足を運んだことへの罰を与えられ、その部屋にいた。目を向ける度に、叔母に言い渡された書き写しではなく、ただ絵を描いているだけのアニン王女が隣にいる。レディ・ピンは気になる気持ちを抑えることができず、その質問を投げかける。


「私は飽きたのよ、ピンさん。本には既に文字が敷き詰められているのに、なぜ書き写しをしなければならないのよ」


 アニン王女は顔を上げ、レディ・ピンの目をガラス玉のような清澄な目で見つめる。


「覚えるために書き写すのよ。部屋から出れば、叔母様が目を通されるかもしれないわ」


 レディ・ピンは疲れを覚え、顎に手を当てて肘をつく。王女は命じられたことに一度も申し立てをすることなく、ただ従うことなんてあるのだろうかと自問自答をしていた。


「もし、本当に目を通すことになるのなら、私は叔母様に音読して聞かせてあげるわ。もう、頭に刻み込まれるほど読んだわ」それを言い終わる前に、視線を落とし絵描きに集中しなおす。


「あんなにも罰をお願いして、しっかりと叔母様のお言葉を承ったのに」レディ・ピンは目の前にいるやんちゃ女子を言い負かしたいため、時間を顧みず問答を続ける。


「この部屋から一歩も出ないことを承ったまでで、書き写しをするとは言ってないわよ」アニン王女はレディ・ピンにその尻尾を掴ませまいと、ひらりひらりと質問を搔い潜る。


 レディ・ピンは王女を言い負かすことは現実的ではないと感じ、ため息をつく。そして、なまじ問答を諦めアニンラパット王女の描いた絵に注意を向ける。


「それで何を書いてるのかしら、グネグネしているようだけど」

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