第二十七章 許可
結局、昨日は何もなかった。ドキュメンタリー番組を見た後、私達は別々にベッドに入ったし、その後もなんとか眠りにつこうと頑張って夜を明かした。
本当は、私分かってる……サムさんが伝えようとしていたってこと。
でも、理解できていないフリをしちゃった。テレビでライオンが毛繕いしてあげていたみたいに、私の髪を舐めたいってこと?なんて誤魔化して。それに、サムさんも私が正直に話すことを望んでいる訳ではないみたいだった。分かっていることがあっても、絶対直接的に言えないタイプなんだよね、だから何かしようとしても、通常の二、三倍は難しくなっちゃう。でも、その方が私にとって都合がいい。
だって……私、まだ心の準備ができていないから。
状況があまりにも一気に進んだから、気持ちが追いついていなかった。だって、昨日は会社を辞めようって頑張っていたのに、今日になったらサムさんと付き合う事になって……その日の夜に、そんなことをしちゃうって……すごく……。
あぁ……なんか熱いな、夏って感じがする。
「モン、どうしたの? 顔が真っ赤だけど、熱でもあるの?」私の隣の席のヤーさんが心配そうに顔を覗き込んできて、手を私の首に当てた。「本当に熱くなってる」
「いえ、熱なんてありませんよ」
「じゃあ、なんでそんなにピンクに頬を染めているのかしら? モンちゃん。まだ朝よ?」
「何かエッチなことを考えているってこと? ふふふっ」目の前の席で同僚のナムプンが冷やかしてきた。「え? ガチ? もっと顔が赤くなってきた」
「色白だと分かりやすいねぇ。私だと、恥ずかしくて赤面しても、周りの人に全然分かってもらえないのに」
ヤーさんとナムプンは楽しそうに盛り上がっている。でも、二人とも急に仕事モードに戻った。顔を上げなくても、理由はすぐに分かる。トイレに行っていたサムさんが今、戻ってきたから。
そっちを見る勇気がでない。なんでこうなっちゃったんだろう……。
ピロリン!
チャットアプリから通知音が鳴った。自分が気がつけるくらいにしたかったから、音量は小さく設定してある。見てみると、「おバカなモイのゴシップルーム」から連絡がきていた。
ケード:モンちゃん、どうだった?
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