第二十一章 理由
私達はお互いに、相手を見つめ合った。サムさんの薄茶色の瞳が、私を捉えて離さない。心臓は服から飛び出してしまいそうな勢いで、バクバクと激しく動いている。
「本当ですか? 本当になんでもいいんですか?」
「うん。あんたが期待してること、なんでもしてあげる」
「なら……」私はそのまま長い時間、黙り込んだ。それから、ようやく答えた。「サムさんにワンって鳴いて欲しいです」
「ん?」
「犬になって欲しいです」
さっきも静かだったはず。なのに、その場はもっと静寂に包まれた。サムさんは意味が分からないというように少し眉間に皺を寄せた。
「なんで犬なの?」
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