第十五章 戦い
これは戦い……。
勝者は相手よりも可愛いくなれる!
サムさんの冷凍庫から出て来て以降、時間を見つけるたびに必死でスタンプを送り続けている。まるで、相手よりもいっぱいスタンプを送った人が可愛い人みたい。それは、仕事が終わってからも続いていた。みんなはもう帰ったけど、私とサムさんは残って、まだスタンプ戦争を繰り広げている。
そんなこんなで気がついたら、もうオフィスにいるのは私とその美人上司だけになっていた。
モン:今気がつきましたが、もうすぐ八時ですね。また今度勝負しましょう。
そう連絡して、自分の席の荷物を片付け、家に帰ろうとした。すると、サムさんは慌てた様子で急に部屋から現れて、咳込み始めた。
「ゲホゲホッ」
「……」
お互いの目が合った瞬間に、冷凍庫でのあのゲームが頭によぎる。一瞬ポーッとしてしまった私は、周囲を確認するふりをして左右を見る事で誤魔化した。
「サムさんは、もう帰りますか?」
「そう。あんたも?」
「はい」
「もう遅いわ。こんな時間に帰ったら、何時に着くのかしら」
私は腕時計を見て、計算してみた。
「十時頃ですね。渋滞に捕まらなければ、九時過ぎだと思います」
「なんでこんな遠いところで働きたいのかなぁ」
「なんでだと思いますか?」