五
驚いたこと以上に、もっと驚くべきことが起きた。あたしがそう告げたときのモンの反応は、あまりにも予想外だった。ハート形の唇をもつ、その新入社員は、涙を目の淵にいっぱい溜めて、深く心を痛めているような顔をした。そしてもはやあたしに死ね!と言われたような勢いで、走り出し、逃げた。
「モン……」
あたしにできることは、ただその場に立ち尽くして、彼女の名前を呼ぶことだけだった。それと同時に、その少女の小さな身体はもうどこかへ消えてしまっていた。あまりの衝撃で、あたしの目にも涙がとめどなく溢れてくる。ゆっくりと床へとしゃがみ込んで、無力な人みたいに座った。
だって……こんな状況になるのを恐れていたから、直接伝えたくなかったのに。こうしてあたしの気持ちを知って、あの子はさっさと逃げていった。
あたし達は、同じ気持ちじゃなかった。
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