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2024年12月8日
ロイヤル・ピン|第四十四章 豊寿く【限定公開】
ある日を境に、私は悪夢をずっと見続けていた。
その夢の中では……。
黒装束に身を包んだアニンが、窓際に設置されたお気に入りの灰色のソファに足を組んで座っている。その姿は……

2024年12月7日
ロイヤル・ピン|第四十三章 部屋の主【限定公開】
「風の噂で聞いたけど、もういろいろと予定の取り決めがあったらしいわね、プリック」
前翼宮の自室で、ソファに座りながら静かに本を読んでいたアニン王女が、静寂を切り裂き、鋭い質問をプリックへと投げかけた。
「はい」
プリックが答えると、悲しげな空気が部屋の中に充満し……

2024年12月1日
ロイヤル・ピン|第四十二章 怒り【限定公開】
「私がグアさんと結婚しますから……」
激しい慟哭とともに飛び出たその言葉は、非常に聞き取りづらいものだったが、アニンラパット王女の全身に巡らされた神経は、まるで耳元で囁かれたかのように、その言葉をはっきりと聞き取っていた。
「何を言っているの……ピンさん?」

2024年11月30日
ロイヤル・ピン|第四十一章 報知【限定公開】
「パッタミカ王女が、妃殿下にお会いになりたいと言われています」
アリサー妃は愛おしいご氏族であるアナンタウット王子とアニンラパット王女とともに、来月末に執り行われる太子様の誕生式典について話をしていた。そんな最中、アリサー妃から多大な信頼を寄せられている使用人のブアが……

2024年11月24日
ロイヤル・ピン|第四十章 王女の命令【限定公開】
「私たちには話さなければならないことがあるわ、レディ・ピランティタ」
パッタミカ王女は、桃蓮宮に足を踏み入れた途端、絶対零度のような冷たい声でそんなことを突然口にした。
ピランティタは、心が地に落ちるような気分になった……。
パッタミカ王女が彼女の名前を……

2024年11月23日
ロイヤル・ピン|第三十九章 金銀之簪【限定公開】
「ランナーの盛装に身を包んだアニンは……」
アニン王女の肩にかかる髪を耳の後ろにかき分けながら、ピンは柔らかな声で囁いた。
「美しすぎて、息をするのを忘れてしまったわ……」

2024年11月17日
ロイヤル・ピン|第三十八章 立てば芍薬座れば牡丹【限定公開】
金銀の刺繍が施された紺色のパトゥンに、肌の色を際立たせる臙脂色のパテープ。その上には装飾品を身に纏い、整えられた髪には石斛の花が飾られ、頬も活き活きとしている。その完璧な風貌に、束ねられた髪の房から時折、一糸が垂れ落ちて、彼女の美しさに拍車をかける。そんなウアンファーの姿を見て…

2024年11月16日
ロイヤル・ピン|第三十七章 チャオファー邸【限定公開】
実は、ウアンファーがその名に受け継ぐ『ダラワン』という家系は、すべての成員が北方出身の人間で構成されているわけではない。ウアンファーの父方の祖父はサイアムの出身で、紆余曲折を経て、当時チェンマイを統治していたブリーラット氏の一人娘と結婚した。そして……

2024年11月10日
ロイヤル・ピン|第三十六章 手紙と届け物【限定公開】
アニンラパット王女がタイに帰国してから二ヶ月が経ち、タイのさる由緒正しき大学院では、建築学部インターナショナルデザイン科の入学者募集が始まった。アニン王女に付いた凄腕の後見人は、一週間もかからず手続きを颯爽と終わらせてしまった。
勉学に誰よりも精を出すアニン王女は……

2024年11月9日
ロイヤル・ピン|第三十五章 私が愛するもの【限定公開】
「今日はどんな風の吹き回しだい、グア君」
桃蓮宮の客座敷で、背筋を伸ばしながら正座をしている年頃の貴公子を見たパッタミカ王女は、少し驚いた様子で口を開いた。
「最近は私がいないところによく顔を出していると聞いているわよ」パッタミカ王女が笑いながら話を続ける。

2024年11月3日
ロイヤル・ピン|第三十四章 ミニチュアホース【限定公開】
「デーンおばさん」
ピンは台盤所で、尋常ではない速さで料理に向き合っているプリディピロム宮殿の炊事長に話しかけていた。今回、宮殿を訪れた主たちの中には、欧風の朝食を好む方もいれば、タイ風の朝食を好む方もいる。また、そのような中に紛れて……

2024年11月2日
ロイヤル・ピン|第三十三章 波の泡【限定公開】
プリディピロム宮殿の最上階の部屋の窓からは、西にある小宮殿が見え、その周囲にはこの地域特有の熱帯植物で彩られた美しい庭園が広がっていた。
アニン王女の見下ろす窓の外には、一組の男性と女性がはっきりと映り込んできた……。
貴公子グアキティとレディ・ピランティタの姿が……
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