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1月19日
ロイヤル・ピン|特別編 第六章 殿下 第二話【限定公開】
「パッタ」
「はい」
殿下の寝室から聞こえてきた、主の疲れ果てた声に、私はすぐに返事をした。何か殿下の身に起きたのではないかと心配が募る。鼓動が速まり、落ち着きが失われていく。
なぜそんなにも殿下を心配するのか。それは……

1月18日
ロイヤル・ピン|特別編 第六章 殿下 第一話【限定公開】
もし私の人生を一言で表せと言われたら、私はこう答える。『徳は積めても背負う業に阻まれる』——そんな人生だと。
私の持つ徳とは、圧倒的なまでの身分である。生まれながらにして与えられた名は『皇太女バロムウォントァー・アーパーヌマース』。後宮内では……

1月12日
ロイヤル・ピン|第五十四章 コルクノウゼン宮殿【限定公開】
「松宮殿の名前を、コルクノウゼン宮殿に変更しなきゃいけない日が来たかもね」
冬の時期が訪れたある日の午後、松宮殿の社でピンとじゃれていたアニン王女が、突然そんなことを口にした。
「アニンはどうして、そんなことを言うのですか?」翻訳業務を進めていたピンが……

1月11日
ロイヤル・ピン|第五十三章 愛しの姪【限定公開】
あれから五年後。
「ピンおばさん」
そんな風にピランティタのことを呼んだのは、アリンラダー・サウェタワリット。アナンタウット王子の長女であるその少女の一声は、ピランティタに自然と笑みを浮かばせた。今、ピランティタは……

1月5日
ロイヤル・ピン|第五十二章 永遠に続くこの状態【限定公開】
「昼食のあと、どこかで用事はあるかい、パッタちゃん」
昼食の最中、アリサー妃が突然口を開いて、パッタミカ王女にそう尋ねられた。
「何もありません、義姉様。何か、私にお手伝いできることが?」
「特に何もないわ。ただ、一緒に部屋に来てほしいだけよ」
「分かりました……

1月4日
ロイヤル・ピン|第五十一章 ご対面【限定公開】
とある日の遅い朝、天頂へと昇り始める太陽の光が窓から一室に差し込んでいた。その部屋の中では、サウェタワリット宮の当主である太子様が、山積みになった資料と真剣な表情で格闘していた。そんな最中、太子様の愛娘が部屋の中に入ってきた……

2024年12月29日
ロイヤル・ピン|第五十章 傷心【限定公開】
レディ・ピランティタの結婚が破談になったという知らせは国中を駆け巡った。その上、結婚式を破談に追い込んだ女性が貴公子グアキティとの子供を身ごもっていると知り、ピランティタが悲嘆に暮れて夜な夜な咽び泣いているという、誇張と評するのが些か可愛らしく思えるほどの事実無根の噂話まで……

2024年12月28日
ロイヤル・ピン|第四十九章 事の発端【限定公開】
時は結婚式の一週間前まで遡る。
貴公子グアキティを幾度となく尾行する内に、プリックは想定よりも簡単に、彼の奇妙な行動の現場を目撃することができた。
「ふふっ」プリックは、想定通りに動いた獲物の姿を目にして、勝ち誇ったように肩を揺らして笑った。「ご覧ください。……

2024年12月22日
ロイヤル・ピン|第四十八章 結婚式【限定公開】
ピランティタは、鏡に写る自分の姿を、何の感情もない視線で見つめていた。そこに映し出されている自分の姿はとても美しかった……黒い長髪は、小さく整った顔を際立たせるように結われ、茶色い瞳に添うまつ毛は、くるりと絵画のような弧を描いている。……

2024年12月21日
ロイヤル・ピン|第四十七章 お願いだから【限定公開】
ピランティタにとって……夜の帳が下りた後の時間は、まるで永遠に終わりの見えない薄暗い道を歩くようなものだった。皆が寝息を立て始める真夜中になれば……その道はさらに深い闇を帯び、足元さえおぼつかない、先の見えない漆黒の道へと化すのだった。
彼女は、そんな夜闇を……

2024年12月15日
ロイヤル・ピン|第四十六章 私の妹ちゃん【限定公開】
「もう何年ぶりかしら。松宮殿の特徴や魅力は、いつまで経っても色褪せないわね」
蜂蜜のように甘く柔らかな声を持つウアンファーの言葉が、プリックの耳を通り抜け、神経を辿って体内で反響する。その心地よさに、プリックは彼女の声色を存分に堪能した。……

2024年12月14日
ロイヤル・ピン|第四十五章 私の主様【限定公開】
「プリック」
「はい、アニン王女」
「私の隣に座りなさい。床に座ってなんかいると、綺麗なパヌンが台無しだわ」
大きなプールの前に設けられたキャンピングチェアに腰掛けていたアニン王女は、自分の足元にどっしりと座っている仲の良い使用人に話しかけた。
「よろしいのでしょうか?……
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